第一話 ルゼリアはつらいよ④
《双子の迷宮》を指差しながらパトラが言う。
「あの距離が、面倒でな。見ていろ……」
寅二郎から見て右、
金虎族だろう獣人たちがダンジョンに迫る。
しかし、
「何だ?右のダンジョンから無数の援軍が!」
右側のダンジョンから夥しい魔獣が溢れだし、
獣人たちを押し戻していく。
「《双子の迷宮》は相互関係にある様でな。
片方を押しても、反対側のダンジョンから補充されてしまう」
パトラの言葉にシドが息を飲みこむ。
「ああ、それにな……」
まだあるのか、とシドが目を細める。
「両ダンジョン、入り口付近に陣取る奴らは魔王軍。
無秩序な魔獣どもを差配しているのだ。
しかも奴らの目的は、おそらく時間稼ぎ」
「そんな……」リラが目を見開き口に手を当てた。
「おそらくこの世界規模の“スタンビート”は魔王軍の仕業。
時がたつほど、奴らにとって有利に働く」パトラが唇を噛む。
この場の皆に沈黙が広がる。
そして状況を一瞥し、寅二郎は舌打ちした。
「……チッ。コアが二つあるのが厄介なら――
俺が右、パトラは左だ。同時にぶち抜くぞ!」
「何だと!」パトラが声を上げ、
「無茶だ!あの数だぞ」シドも叫び、
リラは何も言えず寅二郎を見た。
「時間もねえだろ?見ろ、獣人たちも限界だ!」
寅二郎の言葉にパトラが戦場に目を向けた。
返り血に染まる獣人たち。屈強な彼らが肩で息をしている――。
「そうだな」パトラの言葉は静かだった。
「トラジロウ行けるか?私も出る」
そのセリフに、寅二郎が「任せろ!」と答える。
「ではトラジロウ、お前たちには右側を。
金虎族の族長と合流し、一気に落としてもらいたい。
私は左へ出よう」
パトラの表情に迷いは無かった。
そうして作戦会議は終わった。
いよいよ戦場に“勇者”と“白虎”が並び立つ。




