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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第一話 ルゼリアはつらいよ③

 吹き抜ける風に血の匂いが混じる。

《双子の迷宮》を望む小高い丘の上にパトラは立っていた。

 眼下に夥しい数の魔獣と戦う、獣人たちの姿が見える。


「厄介な」


 パトラの目は迷宮の前に陣取る魔王軍を捉えていた。


 パトラの後ろに金虎族の長老が跪く。


「戦況は膠着状態。

 ですがあちらは無限とも思える物量。

 このままでは……」

 言い淀む長老にパトラが言った。


「分かっている。

 ミレイアに救援要請を出した。

 もうしばらく持ちこたえてくれ」

 パトラは握る金の錫杖に力を込める。


(まずいな、皆の疲労もそろそろ限界。“アレ”を解放するしか無いか」


――“白虎化”。パトラに眠る獣人の力の開放。圧倒的な力を得る代わりに、確実にパトラの未来が削られる禁断のスキルだ。


 長くパトラに侍る侍女たちの顔が蒼白となる。

 そんな侍女たちに向けてか、パトラが呟く。


「何、どちらにせよ、ここを乗り切らねば私の寿命など意味も無い」

 その言葉に侍女たちはなおも俯いてしまった。


 重苦しい空気の中、剣戟の音が響くが、

「おい!パトラ大丈夫か」息を切らせた寅二郎たちが走りこんできた。

 シドやリラも追いつき、肩で息をする。


 そんな寅二郎たちを振り返り、

 パトラが目を丸くする。


「何だ、ミレイアからの救援とはお前たちか」

「何だって何だよ。せっかく来てやったのに、ハァ」

 ハァ、と息を吐き寅二郎が言う。


「お前たち、世界樹は?

 魔王の居場所は……いや、そうだったな」

 パトラも息を吐き、


「助かる」と言った。


「そうこなくちゃな!」寅二郎が笑い、


 シドが眼下の戦場を見ながら言った。

「それで戦況は?《双子の迷宮》、何が問題なんです?」


「ああ、見てくれ」そう言ってパトラが指を差す。


「あそことあそこ、

 あの距離で二つのダンジョンが並んでいる。

 あれが《双子の迷宮》だ」


 寅二郎は静かに、その二つに目を向けた。


「……なるほどな」


草原に並ぶ、二つのダンジョン、そして眼下に広がる戦場に――。

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