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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第一話 ルゼリアはつらいよ②

“フォレスト”内の謁見の間。

 そこには国主である耳長族ミレイアと小人族代表ボルカンの姿があった。


「来ましたか、“勇者”トラジロウ。

 事情はヴァルニスからの早馬で承知しております」


「やばい状況になっておるな」

 ミレイアにボルカン、二人の顔も曇っている。


「ああ、それで師匠、

 いやトンペティに世界樹でマナの異常な流れを調べろと言われてな」

 相変わらず立ったままで応える寅二郎。


「もう、トラジロウは……」

 跪くリラがトラジロウのシャツの裾を引っ張っている。


 同じく跪いていたシドだったが顔を上げ、ミレイアに尋ねた。


「ミレイア様、パトラ様のお姿が見えぬようですが……」

 シドに頷き、ミレイアが言った。


「ええ、世界規模での“スタンビート”、

 世界樹を奉ずるここルゼリアでも例外ではなく、

 各地のダンジョンに発生しております。

 彼女はその先頭に立って事に当たっているところ。

 同じ理由でファルディーンも不在です」


 シドだけでなく、寅二郎やリラも言葉に詰まる。

 今回の異常さが、想像より遥かに重いことに。


 その様子にミレイアが微笑を浮かべる。


「ふふ、トラジロウ。パトラを案じてくれているのですね。

 ですが、彼女も白虎族の女王、きっと役目を果たしてくれます」


 寅二郎は、戦場に誇り高く立ち檄を飛ばすパトラを思い浮かべ、微笑んだ。


「ああ、そうだな」


しかし、


「獣人族代表パトラより救援要請!

 《双子の迷宮》、想定以上の速度で“スタンビート”発生。

 対処に困難、とのことです!」


 突如、謁見の間に飛び込む伝令、その報告にボルカンが叫ぶ。


「何と!あのパトラが救援要請?これはただ事では無いぞ!」


 場が静まり返り、ミレイアが深く考え込む。


「ファルディーンもつい先日、出たばかり……」


「おい、ミレイア、儂が出る!」

 ボルカンが叫ぶ、しかし、


「シド、リラ、行くぞ!」

 と、寅二郎が叫び、シドとリラも立ち上がった。


 そんな寅二郎たちの背中に鋭い視線を投げたのはミレイアだ。


「トラジロウ、

 あなたは世界樹へと赴きマナの異常を突き止める。

 そのためにここに来たのですよ」


 ミレイアの声色が低く沈んだものに変わる。


「マナの行きつく先にはきっと魔王が、

 それを見つけて流れを正す。それが“勇者”、その使命では?」


 寅二郎が振り返ると、その身に白い光を纏っていた。


「そんなことは後だ!」

 寅二郎は一歩、前に出た。


「目の前の女も助けられねえで、何が“勇者”だ!」


 その言葉に誰もが息を呑んだ。

 伝令は跪いてすらいた。


 そして睨みあう寅二郎とミレイア。


しかし、ミレイアが一つ息をつく。


「分かりました。伝令、ご苦労ですが彼らを《双子の迷宮》へ」


 伝令が立ち上がり、「こちらへ」と寅二郎たちに言った。


「悪いな、ミレイア」


 白い光が消えうせた、寅二郎が苦笑いで言った。


「でもな、もっこり美女は見捨てられねえんだ」

 

 そうして、謁見の間を走り去った。


「そうでした、あの人はそういう“勇者”でした」

 ミレイアの微笑みにボルカンも釣られ、


「ああ、そういう事だ。……パトラを頼んだぞ」


二人は微笑みを交わし、

それでも変わらずそこに在る、世界樹を見上げたのだった。

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