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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第七章 人魔決戦編
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第一話 ルゼリアはつらいよ①

 何も見えない闇の中――


 時に広がり時に縮むその闇の蠢きが、ここへ向かって流れ込んでいる。


「……始めるか」


 その声が闇へと溶け出し、世界はいよいよ動き出した。


―――――


「世界樹へ行け!」


 武聖トンペティの言葉に従い、

 寅二郎たちはルゼリアへ馬車を走らせる。

《青環の神殿》の“スタンビート”鎮圧の報告のため国主マルセロの下へと赴き、専用馬車を用立ててもらったのだ。


「ふむ、世界樹へ行くのだな。

 もはやこの事態、ヴァルニス一国の話では無い。

 急げ、トラジロウ。

 そして見極めよ、魔王の野望を打ち砕くために――」


 マルセロの言葉を胸に、寅二郎は馬車の窓から眺めていた。

 遠くに見え始めた世界樹を。


「こんな形で帰ってくるなんて……」リラが手を組み呟く。

「ああ、しかも世界樹の導きで魔王へと至る。こんなことになるとはな」

 シドも腕を組むが、落ち着かない様子。


「焦ってもしょうがねぇよ。リラックスしろよ、リラックス。

 リラちゅわん、何ならおっぱい、揉んでやろうか?」

「馬鹿」寅二郎の顔面にリラの拳が刺さる。

「あいたぁ!」いつもの雰囲気を感じ、シドが息をつく。


 しかし、そんな寅二郎も懐のニューナンブに手を添えていたのだった。


その頃、世界各地では彼らの不安を裏付けるように異変が広がっていた。

それは国境も、種族も選ばない。まさに世界各国で――。


 リ・エスティーネ王国内のギルド、受付のマロンは怒号飛び交う只中にいた。

「《灰哭の巣窟》に“スタンビート”の兆候、回せる冒険者はすぐ向かわせろ!」

(今ので三件目、これから何が起こるというの?……)


 砂漠王国カルナードでは国王代理ジャファル・カルナードが指示を出す。

「すぐに冒険者たちをダンジョンへと向かわせろ!

 リ・エスティーネ王国には勇者PTを救援に来るよう要請した。

 アンナたちが来るまで持ちこたえるのだ!」


 ガルディア帝国皇帝レギウス三世も、次々と上がる報告を受けていた。

「ふん、魔王ノクスめ、動き出したか……

 よかろう、アレの実装すべき時が来たな。すぐに回せ」

 傍に侍る三魔将《調律者》ハルモニアが「御意に」と頷いた。


 ルゼリアのミラステラ宮殿へと戻ったトンペティ。

 国主マルセロが眉を寄せながらも告げた。

「老師、《青環の神殿》から戻ってすぐで申し訳ないが……」

「構わん、このマナの異常な流れ。すぐ次へ向かおう」

 と、マルセロに答えたトンペティは寅二郎を思う。

(頼んだぞ、トラジロウ)


 世界中で異変に立ち上がる中、

 寅二郎たちの乗った馬車がルゼリアの“フォレスト”へと停まった。


「行くか」


寅二郎は歩き出す。

"フォレスト"の奥に聳える世界樹。

まるで、その世界樹に呼ばれているかのように――。

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