↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
213/293

第九話 前兆はつらいよ⑥

 コアの祭壇に向かう廊下、

 廊下に満ちる禍々しい気配に寅二郎たちは声も上げず歩いていた。

 しかし次第にサハギンの数が減ってきている。


「この奥じゃな」ようやくトンペティが声を上げた。

 寅二郎たちも頷き、いよいよコアの祭壇の間へと足を踏み入れた。


「来たか」


 黒く輝くコアが中心に鎮座する広間。

 その傍に二つの影が立っていた。

 その身から赤黒い煙のような“瘴気”が立ち上っている。

 瘴気はまるで神殿の水の気配を汚すように広がっていく。


 そしてそれらの額からは角が生えており、

 笑みを浮かべるその口元からも瘴気が漏れる。


 その、人を見透かすような視線を受け、寅二郎が剣を構える。


「魔族か」


 シドやトンペティも身構えた。


 その姿を見回し、魔族の一人が言った。


「遅かったな。仕上げは完了したぞ」


 そのセリフに寅二郎たちに緊張が走る。

 魔族は微笑みながらコアを見上げる。

 コアは赤黒い瘴気をまき散らし明滅している。

 その明滅する様はまるで心臓の鼓動の様で不気味だった。

 しかも周りには触手のようなものが四方に伸びている。


「何だ、あれは?」シドが叫び指差す先、

 コアから伸びた触手から黒い雫が垂れた。


 雫が落ちた床から煙が立ち上り、何とサハギンが現れた。


「こ、これが“スタンビート”、魔物発生の瞬間か!」

「とにかく止るぞぃ!」トンペティのセリフと共に走り出す。


 迫るトンペティに手を広げ、魔族が叫ぶ。

「来い!魔王軍ヴァルニス方面軍副指令、この激流の――」

 ズガン、魔族に最後まで言わせずトンペティが殴りつける。


「お前らの名前なぞ興味は無い!」


 吹き飛ばされる副指令を見て、もうひとりが飛び退る。


「もう流れは止まらん!

 所詮我らは時間稼ぎ!遊んでもらうぞ!」


 そう言いながら、両の手の平に炎の弾を浮かべる。

 しかし、その魔族の後ろにはシドが屈んで待っていた。


「遊んでる場合じゃないんでな」短剣を切り上げ魔族の腕を飛ばす。

「とっとと寝てろ」と寅二郎が剣に光を纏わせ、魔族を両断した。



 雫から生まれたサハギンを倒し、トンペティが言う。


「魔族は鎮圧したが、これはまずいのぅ」

 そうしてトンペティは周りを見回し言った。


「感じるか?トラジロウ。

 このコアの異常は点、

 しかし巡るマナの異常はどこかへ線となって向かっておる」


 確かに寅二郎も、マナの異常がここだけでは無いことを感じていた。

 胸の奥で、世界樹に触れた時のように、何かが流れざわめいた。


「それなら、どこへ?

 この異常な流れはどこへ向かってるんだ?」


 トンペティはしばらく目を瞑っていたが、目を見開き言った。


「トラジロウよ、世界樹へ行け!

 あそこならこの異常の行きつく先、魔王の居場所が分かるはず!」


 トンペティのセリフで寅二郎の剣を握る手に力が籠る。


「しかし、トンペティは!」

 再び現れたサハギンを切り裂き、シドが尋ねる。


 四方に伸びた触手からは少しずつだが、まだ雫が堪っていく。


「この状態がいつまで続くか分からん。

 お主ら先に戻り、冒険者たちを呼んできてくれんか」


「でも!トンペティお爺さんは?」リラが言う。


「儂はこう見えて“武聖”じゃよ?構わんから、早く行け!」

 微笑み、腰に手をやるトンペティが言った。


「そうだったな!じゃぁ俺たちは行く。またな、師匠」

 そうして、寅二郎たちは顔を見合わせ走り出した。



 寅二郎たちの背中を見つめていたトンペティだが、ふと天井を見上げる。


(何じゃ?あのコアの真上、天井画か?

 コアを守るように、……あれは、竜、なのか?)


こうして《青環の神殿》の“スタンビート”は制圧に向かう。

しかしこれはあくまで“始まり”であることを誰もが感じているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。