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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第九話 前兆はつらいよ⑤

 寅二郎たちの向かう先、

 広間へ抜けるその前に立ちはだかる壁。

 廊下を塞ぐ巨大なそれは――。


「グランドタイマイ、じゃな」

 トンペティのセリフに答えるように“壁”が咆哮を上げた。


ガアアアアッ!


 ゴツゴツと強靭そうな顎を開き咆哮を上げ、背中は巨大な甲羅に覆われている。

 石柱の様に太い四肢がこちらへと歩を進めだす。あまりに巨大な亀だ。


「でけぇな」


 まさに壁が迫るような圧に、寅二郎が呟く。


「それでも目的地はこの先じゃ。行くぞ!」

 トンペティが再び走り出す。


「風よ!」シドが風魔法のナイフで目を狙い、

「しゃぁねぇか!」寅二郎が剣で脚を狙う。


キキイイィン!


 金属がぶつかる様な音を立て、二人の攻撃が弾かれる。

「ちぃ」「硬ぇな」二人は距離を取り直し、

「喰らえ!」トンペティの一撃がグランドタイマイの顎に炸裂した!

 ゴガンっと音を立て顎が欠ける。

 グルルと声を上げるタイマイだが、その歩みは止まらない。


「遊んどる暇は無いんじゃがの……」

 トンペティも下がり、構え直す。


 そして腰を落とし、深く息を吸い込んだ。


 その様子を見た寅二郎が叫ぶ、

「師匠、溜める気か、おいシド!」

「ああ」寅二郎とシドはタイマイへと走り出す。

 少しでもその歩みを止めようと、ひたすらに斬りつける。


 それでも止まらず、いよいよタイマイはトンペティの目の前に。

 トンペティを食いちぎろうかと顎を開いた。


 タイマイの顎が迫るその瞬間、


 トンペティにリラのバフ《ストレングスアップ》が降り注ぐ。


「待たせたの」


 トンペティがそう言うと、光が渦巻く拳を振り抜いた!


ガオン!


 巨大な杭を打ち付けたような音が響き、

 顎を砕かれたタイマイが吹き飛ぶ。

 広間に満ちたサハギンの群れをまとめて薙ぎ倒すのが見えた。


「オシ!やったな」寅二郎たちが広間へ進む。


 しかし、


「おいおい、まだか」シドが短剣を再び構える。


 見ると小山の様なグランドタイマイの他にも大きな影が。


 ゲル状の光る肌をした触腕が蠢き、

 大きな袋の様な頭、

 その両側に大きく光る眼が見えた。


「亀の次はタコかよ!」寅二郎が叫ぶ。


 その異様な動きに距離を取り、剣を構える。


「グランドオクトパス、じゃな」と、トンペティも構える。


「雷よ」シドがお試しとばかりに雷魔法を放つ。


 その雷はぬめぬめした肌で弾かれたように見え、効果は薄そうだ。


 しかも奥から再び、サハギンの群れがやってくるのが見える。


「来るぞ!」


 シドの叫びと共に広間は一気に混戦となり、各地で剣戟の音が響く。

 しかも奥から奥から、影が増えていく。


「打撃では効果が薄いのぉ」

 グランドオクトパスの触腕を躱し、

 その腕を叩きつけたトンペティが嘆いた。


「まずはこのゲル状の肌を何とかせんと。

 しかし今はマナを溜める時間も……」


 後ろから突き出されたサハギンの槍を躱し、距離を取る。


「一か八か!シド、あそこに火の魔法を」

 寅二郎が触腕を指差し、叫ぶ。

 シドはすかさず頷くと手をかざした。


「炎よ!」シドの手から火球が飛び、触腕に着弾。そこへ、

「おらあ!」走り寄った寅二郎が剣を切り上げる。


スパン、綺麗に剣が抜けた音がして、触腕が飛んでいく。


「タコは、ぬめりを取ってから料理するもんだぜ!」


「なるほど、“重ね”ということか」


 トンペティが再び拳を握る。今度は小刻みに振動している。

 その間もシドの炎魔法に合わせ、寅二郎がオクトパスを切り刻む。


 そして、トンペティにマナが満ちるのを感じ寅二郎が叫ぶ。


「任せたぜ!師匠」


 寅二郎が飛びのいた、その後ろにトンペティの姿。


「ハッ!」気合一閃、トンペティが拳を振り抜いた。


 グランドオクトパスに着弾すると、オクトパスの体が波打った。


次の瞬間――。


 ドパっと音を立てオクトパスは爆散しつつ吹き飛んだ。


「ふう」寅二郎たちがサハギンたちを倒し、その身に《ヒール》の光。


「ようやく一段落じゃな」トンペティも息をつく。


「タコの刺身で一杯やりたい気分だな」

 寅二郎のセリフにシドやリラは苦笑いを浮かべるが、


「これからが本番。それを忘れるでないぞ」

 トンペティも笑っていたが、その目はその奥、コアへと向いていた。


コアの祭壇へと向かう廊下、その奥からマナの乱れが確実に漂って来ていた。

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