第九話 前兆はつらいよ④
《青環の神殿》。
六対の石柱を抜け神殿の内部へと進む寅二郎一行。
六対の石柱には、それぞれ違う紋様が刻まれていた。
水・火・風・土・光・闇――六属性が生まれた頃の古い意匠だ。
海底にあるとは思えない巨大な建造物は、
地上でも古代遺跡などによく見られる石材で作られ、
魔鉱石製の明りに照らされ奥へと続いている。
玄関口であろう、ここは海底の続きの様に静かだった。
静まり返った神殿内を皆一様に警戒しながら進んでいたが、
先頭を歩くトンペティが立ち止まり言った。
「来たな」
その声に寅二郎たちも立ち止まると、
ヒタヒタとこちらへ歩いてくる物音が聞こえてきた。
「おい!あれは……」剣を構えた寅二郎の視線の先に、
直立する魚の様な魔物、サハギンが群れて歩いてくる。
ぬらりとテカる鱗に覆われ、手には槍を持っている。
「5,いや6匹か!違う、奥からまだ来るぞ」
シドも短剣を構える。
でも、とリラが眉を寄せる。
「何だか雰囲気がおかしくない?」
サハギンたちは目をギョロギョロと動かし、水のマナが逆流しているように見えた。呻き声も、どこか水音のように濁っている。ヒタヒタとこちらへ歩き続け、ようやく寅二郎たちを認識したのか、槍を構えだした。
「何か起きとるのは間違いない。このまま押し通るぞぃ!」
拳にマナを収束させ走り出すトンペティ。
サハギンの群れに拳を叩きつけると、まとめて吹き飛ばした。
「奥に広間、そのさらに奥にコアの祭壇じゃ!
ちんたらやってはおられん。行くぞ!」
「おう」トンペティの号令と共に寅二郎も剣を繰り出し、走り出す。
次々と襲い来るサハギンを殴り、斬り、蹴散らし進む寅二郎たち。
廊下をしばらく進むとサハギンの襲撃が止んだ。
「何だ?もう終わりか?」剣についた返り血を拭い寅二郎が言った。
「いや、分からん。この先に何かあるのか」
シドやトンペティも立ち止まり、その体に癒しの光が降り注いだ。
「ちょっと待ってね」
そう言ってリラが《ヒール》をかけて回る。
「おおリラちゅわん、癒しの光、生き返るぜぇ」
寅二郎が微笑むが、トンペティは苦い顔。すっと先を指差した。
「サハギンが来んのは、アレのせいじゃな」
トンペティの指さす先、広間へ抜けるはずのそこは、
巨大な何かに塞がれて見通せなくなっていたのだった。




