第九話 前兆はつらいよ③
寅二郎一行はトンペティを加え、
《青環の神殿》の入り口に立っていた。
見上げた先にはミラステラ宮殿が見える。
確かに目と鼻の先だ。
そして浜辺に建つ入り口は小ぶりな小屋といった風情をしていた。
その小屋の周りにはたくさんの冒険者たちの姿が見えた。
「これが神殿?とてもそうは見えないぞ?」
寅二郎がトンペティに顔を向けて言った。
「慌てるでない。あくまでこれは入口じゃ。
皆、準備は良いな?」トンペティが扉を開き、中へと入る。
「トンペティ!」「頼んだぞ、お前ら」冒険者たちの声援を受け、寅二郎たちも中へと入った。中は普通の小屋に見えたが奥に一か所不思議な穴が見えた。
「何だ?これ。ここが入り口か?」寅二郎はその穴を覗き込む。
「ここを通って神殿へ行く。皆ついてくるのじゃ」
トンペティが先立ち、そのトンネルを進んでいく。
丸い透明の膜の様なトンネルを歩く。
その膜は渦を巻くように海底へと続いていた。
「こう言っていいのか分からないけど、綺麗ね」リラが声を上げた。
「ああ、海の中を歩いているような不思議な感覚だな」
シドも興味深げに辺りを見回している。
透明な膜の向こうでは魚が泳いでいるのが見える。
日の光が差し込み、煌めく海中を歩き続ける。
「おい!あれを見ろ」しばらく歩き続けた寅二郎が声を上げた。
見ると、大型で魚の様な見た目の魔物が、目の前を通り過ぎていった。
「こちらを襲ってくるようではないな」
シドは短剣を構えつつ言った。
「そうね。どこかへ導かれているような……」
リラも何体もの魚型魔物が行く先を見つめる。
「ふむ、あれは敵意が無いんじゃないのう。
意識がここに無い。ほれ見てみい」
トンペティが指差す先、
大型の魔物たちは同じ方向へ向かっていく。
そして、しばらく歩き続けた先、
渦の中心に佇むように、それは姿を現した。
「あれが神殿か?」寅二郎が指差す。
らせん階段の様だったトンネルの先に神殿が見えた。
「おい!あれはどういう事だ?」シドが目を見張る。
確かに神殿は見えた。
しかしその神殿の周りに小型の魔物が群がって見えた。
魔物は神殿へとぶつかり弾かれている。
「やはり神殿に何かある、ということか」
シドのセリフに皆息を呑み、いよいよ神殿へと足を踏み入れた。
寅二郎は、胸の奥が静かに引き絞られる感覚を覚えていた。




