第九話 前兆はつらいよ②
寅二郎たちがミラステラ宮殿へと到着した。
案内に尋ねるとすぐに謁見の間へと通された。
「来たか、トラジロウ」
先着していたらしいトンペティがこちらに手を振っている。
「師匠、だいぶヤバいらしいじゃねえか」
寅二郎はトンペティに苦笑いを浮かべる。
「不気味さ、ということではだいぶヤバいの」
トンペティが肩を竦める。
「ああ、《青環の神殿》でこの異常。不安に思わん人間はおらんな」
国主マルセロがため息をついた。
――《青環の神殿》、首都ミラステラの目と鼻の先、その立地ゆえ管理は万全。のはずだった。しかしそこで“スタンビート”の兆候。誰もが耳を疑った程だ。
「つい先日も定期検査が入ったばかりだった。それがこのざま。
ここで何かあれば即ミラステラの危機だ。そこでな……」
マルセロはトンペティと寅二郎を見回して言った。
「今回は少数精鋭でのダンジョン探索とすることにした。
もちろん後詰には冒険者たちに入ってもらう。……しかし」
「ああ、今回も速さが勝負。後詰に頼る様では……」
トンペティが言い、
「何が起こるか分からん。そういう事だ」
マルセロが重く頷いた。
「でも、なんで俺たちが呼ばれたんだ?」
寅二郎が首を捻るが、
「お前、世界樹に触れただろう?
つまりマナの巡りをその身で感じられるはず」
トンペティが言った。
「それにお前は仮にも“勇者”。
この危機に、魂が打ち震えてくるじゃろう?」
トンペティが微笑み、
シドやリラの視線を感じて寅二郎が言った。
「……分かったよ。
ここで逃げるわけにもいかねえか。行くよ」
「そうと決まれば直ぐにでも発ってもらいたい。
冒険者たちには私の方から指示を出しておく」
そのマルセロの言葉で会議は終わり、
寅二郎たちは《青環の神殿》へと向かうこととなった。
浜辺に建つ《青環の神殿》への入り口、
多数の冒険者たちが不安の表情を浮かべ立っている。
その深奥には確かに何かが蠢いているのだった――。




