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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第九話 前兆はつらいよ①

 魔王の居場所、

 その手掛かりとなる前兆は無いかと、

 ヴァルニスのギルドへ通う寅二郎一行。


「なかなか魔王に繋がる依頼と言ってもな…」シドが唸る。

「平和ならそれでいいじゃねえか」いくつか依頼を眺めながら寅二郎。

「もう、緊張感が無いわね。トラジロウは」リラはため息をついた。


 そんな中、入口の扉が開きギルド職員らしい男が、

 一心不乱に二階へと駆け込んでいった。


「何だ?」シドだけでなく、ギルドにいたすべての者が騒めいた。


 男が受付に戻り、声を上げた。


「サエキ・トラジロウさんはいらっしゃいますか?トラジロウさんは!」


「面倒なことになりそうだな」そう言って腰の引ける寅二郎。

「馬鹿!」そう言われシドリラキックを尻に喰らう。

 ドスっという音と共に、寅二郎は受付に立った。


「俺が寅二郎だ」


 尻をさすりながら受付に言う寅二郎を遮り、受付の男が叫ぶ。


「ああ、トラジロウさん!急いで国主マルセロの下へ。

 武聖トンペティもすでに向かっているはずですから……」

 そして、男は続けて言った。


「ギルド内の冒険者の皆さんも待機でお願いします!

 《青環の神殿》にて“スタンビート”の兆候有り!

 皆さんの協力をお願いすることになるかもしれません!」


「スタンビート!」「まさか《青環の神殿》で?」ギルド内が騒然となる。


「いよいよ、かもしれないな」シドは眉間にしわを寄せ、

「トンペティさんが動くなら、そういう事だよね」リラも不安げだ。


「まぁ行くしかねえな」


 寅二郎も歩き出した。

 帝国からこちら、左脇に装備されたままお守りと化したニューナンブ。

 無意識にそこへ手をやったまま。


 ヴァルニスの首都、

 ミラステラ宮殿では国主マルセロが玉座に座ることもせず、

 立ったまま待っていた。


(トンペティ、まだか!)


入口を見つめるマルセロは、理由もなく、胸の奥がざわつく。

まだ大した被害も出ていない。それが、かえって不気味だった。

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