第八話 勇者PTルゼリアへ行く⑦
翌朝、“フォレスト”内の謁見の間にて調印式が執り行われた。
国主ミレイアの傍には獣人族代表パトラ、小人族代表ボルカンの姿もあった。パトラとボルカン、二人が掲げられた旗を見上げる。そしてミレイアが五大国の一員として魔王軍との戦いに結束を強めることを宣言し、連判状に署名捺印した。
そうして謁見の間に拍手が鳴り響いた。
(これで五大国が一つとなって。いよいよ魔王との対決は近い)
アンナの拳にも力が籠る。
そして拍手が途切れようというところで、
ミレイアがアンナたちを見回し言った。
「アンナ、“欲望の果て”の件ではありがとうございました。
ルゼリア一同を代表して御礼申し上げます。
我ら一同、“勇者カミシロ・アンナ”のために力振るうことを誓いましょう。
ですが……」
アンナたち“友好使節団”の面々に戸惑いが広がる。
その戸惑いを確認するように、一つ頷きを入れたミレイアが言った。
「私たちは人族の行き過ぎた欲望には否を唱えます。
それを忘れないで」
ミレイアは、アンナの目をまっすぐに見据えた。
「肝に銘じます。我々も、その時には止めて見せます」
アンナもミレイアを見返し言った。
「退くつもりはありません」
アンナと《暁の翼》の面々は並び立ちミレイアに、ルゼリアに誓った。
ミレイアは、そんなアンナたちの様子にふっと微笑む。
「我らの力、合わせることでこの世界に平和を取り戻しましょう」
こうして五大国を巡ったアンナたち“友好使節団”。
その最後の一国との調印式が終わった。
帰りの馬車の中では、その達成感からか皆興奮に包まれていた。
「いよいよここまで来たね」リルルが握った拳を震わせる。
「ああ、あとは魔王との決戦。だな」アリアも組まれた腕には力が。
「勝つしかないわね」ヤスコの顔も紅潮している。
「大丈夫、ですよね」そう言うが、ユキナの祈る手は震えている。
「大丈夫!私たちは“勇者”PTだよ。
魔王に勝ってみんなで平和を勝ち取るんだ」
アンナは元気な声を上げた。
しかしその顔は上気し汗が流れた。
「ふふ、無理しちゃって。
大丈夫。
アンナの気持ち、私たちには伝わってるよ」
ヤスコが苦笑いで返し、皆も微笑んでいる。
(本当に心強いよ、皆。私たちは一つ、なんだね)
アンナは胸の奥を熱くしたまま王都へと帰るのだった。
しかし、馬車の傍アンナたちの様子を見ながら騎乗するエルザ。
彼女の顔は馬車の中、アンナたちとは全く逆に曇っていた。
(ミレイア様のあのセリフ、ここまで来てまだ……。
というより魔王のその先を見ているというの?)
“友好使節団”
その一行は粛々とリ・エスティーネ王国への帰途へとついたのだった。




