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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第八話 勇者PTルゼリアへ行く⑤

“フォレスト”内の書物庫へと足を踏み入れたエルザ。

 ほんのりと黴た匂いが鼻についた。

 いくつか魔鉱石の明かりが灯り室内を照らしている。


「これは……」エルザが思わず声を上げる。その蔵書の多さに。


「これが我がルゼリアの“知”の結晶です」入り口のエルフが答えた。


 幾つもの書棚が置かれ、まるで迷宮の様だ。

 しばらく放心状態で立っていたエルザだったがまっすぐ歩き出した。


 何かに呼ばれている気がして。


 そして突き当りに置かれた大きな書物の前で止まった。


 専用の台に置かれている。


 表紙に大きな世界樹が描かれている。

 しかし文字が読めない。古代文字の様だ。


「すみません」エルザは振り返り、案内役のエルフを呼んだ。

 エルザに「何と書かれているのですか」と問われたエルフが答える。


「“欲張りと世界樹”と書かれております。

 もし、内容がお知りになりたいのでしたらこちらを……」

 そう言って一冊の本を取り上げた。


「こちらは読み聞かせるよう作られた、“欲ばりと四人のとなり人”。

 子供たちの間では“樹のおはなし”としてよく知られたお伽噺です」


 その本をエルザは受取り、読み進める。


(人族と、耳長族、これがエルフということは、小人族はドワーフ、獣人族、

 そして……竜人族?こんな種族は存在しない!しかも最終的に世界樹に?)


 エルザは案内役のエルフに振り返る。


「竜人族とは一体?」


 エルザの問いには答えず、

「人族の飽くなき欲望が世界樹を創ったと言われています。

 その飽くなき欲望を止めるのが我らの役目と心得ております」

 という答えが返ってきた。


(竜人族は機密事項、のようね。それでも人族に対するルゼリアの対応は、ここから由来するのは分かった。“人族の飽くなき欲望”、か。耳に痛いな)


 そうして、

 どこかいたたまれなくなったエルザはすっと背伸びをした。

 すると“欲張りと世界樹”の置かれた台の奥に壁画が見えた。

 台の裏へと周り壁画に目を凝らす。


 その壁画には中心に世界樹が彫られている。


 しかし、


「何?この世界樹の周りに描かれた6匹の、これは……龍?」

 再びエルザからの視線を受けた案内役のエルフは、

「世界樹がマナの巡りの中心であることを表すレリーフです。

 それではそろそろ……」と言い入口へと歩き出した。


(時間切れ……か、国王は、聖母マリアは何を思うの?)


エルフに続き歩き出したエルザの頭の中は、混乱していた。

人族とルゼリア、人々の欲望、それに竜人族と世界樹。報告書の内容、その書くべきことの多さに頭を悩ませるのだった。

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