第八話 勇者PTルゼリアへ行く④
翌朝、アンナたち《暁の翼》はミレイアの先導で世界樹へとやって来た。
「すみません、ミレイア様自らご案内いただけるなんて」
恐縮するアンナにミレイアが首を振る。
「私が提案させていただいたことですし、それに……」
ミレイアがそっと視線を動かし、
釣られてアンナたちも世界樹を見上げた。
「あなたが世界樹で何を見るのか、とても興味があるのです」
早朝のさわやかな風が吹き抜ける。
そして、アンナはゆっくりと世界樹へと歩き出した。
「世界樹に触れると何か起きる、というのか?」アリアが呟き、
「悪いことは起きないでしょ?」といいつつ、リルルは眉を顰める。
「わざわざミレイア様が付いてらっしゃるのは……」
ヤスコはミレイアへと視線を移す。
ミレイアはアンナをずっと目で追っている。
(アンナさん……)ユキナは自然と祈りを捧げていた。
風が止んだ。
アンナは世界樹、その太い幹へと手を添えた。
その瞬間、「!?」アンナの中で何かが駆け巡った。
(何だろう?この感じ、嫌な気持ちはしない。だけど……)
世界樹に触れ微動だにしないアンナに《暁の翼》の面々が駆け寄る。
「どうした?」「アンナ!」口々に言いながらアンナに触れた。
すると皆の中にもそれはどんどんと流れ込み、伝わっていく。
「ほう、そうきましたか……」ミレイアは目を細める。
アンナたち《暁の翼》の面々は大いなる流れの中にいた。
(みんな!)声というより、意識が共有された状態。どこかに浮いている感覚だ。
アンナの中に、それぞれの中に様々な意識が流れ込む。
(アンナ、無事なようだな)
(でもこれってどういうことだろ?)
(私たちの意識が一つになったような)
(暖かい気持ちになりますね)
アンナたちはこの流れに平穏を感じた。安心を。そして調和を。
そうして不意に、無性にある思いがアンナたちに沸き上がった。
(これを守らなくちゃ!)
アンナたちは世界樹の前に立っていた。
ミレイアはアンナたちを見回し言った。
「お帰りなさい。あなたの“勇者”の在り方、見せていただきました」
微笑みを浮かべるミレイアに、アンナが尋ねた。
「ミレイアさん、世界樹って何なんですか?」
一方その頃、エルザは“フォレスト”内にある書物庫の前にいた。
「このような重要な場所へ立ち入らせていただいて、
よろしかったのですか?」
重要機密とも呼ぶべき古文書や文献の納められた書物庫。
案内に立ったエルフが答えた。
「国主ミレイアより、
『我らの事を良く知っていただく良い機会。
求められれば隠さず見せよ』と言われています」
そう言って扉を開けると、道を譲った。
「私はここにおります。どうぞ」
エルザは頭を下げ、書物庫へと足を踏み入れた。
そこは、世界樹、ルゼリア、世界の深淵へと続いているのだった。




