第八話 勇者PTルゼリアへ行く②
アンナたち“友好使節団”を乗せた馬車が、
亜人共和国ルゼリアの首都リュゼリオンへと辿り着いた。
沿道にはエルフやドワーフ、獣人たちが往来しており、
馬車を見かけるとこちらへとを振り歓声を上げる。
「おお、これだけの亜人たちが普通に生活している様は壮観だな」
アリアが馬車の窓から見える光景に声を上げた。
「ええ、本当に物語の中に来たみたいで心躍ります」
ユキナは興奮した様子でずっと窓に張り付いている。
「アハハ、ユキナはこういうの絶対好きだもんね。
最初世界樹が見えた時も随分はしゃいじゃって……」
リルルが大げさに手を広げ、ユキナをからかう。
「だって、とっても素敵だったから……」
顔を真っ赤にするユキナに、ヤスコが助け舟を出す。
「リルルも大概、はしゃいでたよ。
それよりも街の人々の反応、言われていたより好感触じゃないか?」
「ああ、国王のおっしゃられた“勇者の立場が云々”という奴か」
アリアは「どう思う?」とアンナに話を振った。
「街の人たちのあの笑顔、演技には見えない。
本当に歓迎してくれてるんだと思う」
アンナは顔を《暁の翼》の面々へと向けると、腰に手をやり、
「《光輪の乙女たち》の名前、随分売れたって事じゃない?やったね」
そう言って珍しくおどけて見せた。
「ハハハ」「そうですね」「やったね」「自分で言う?」
馬車の中は笑い声に満ちている。
それでもアンナは一人思う。
(“希望の象徴”、そのためにはこれからが本番。気を引き締めないと……)
そうして馬車は世界樹の麓、
大きな樹に造られた城、“フォレスト”に停まった。
「これはまた、ファンタジーここに極まれりって感じだな」
「とっっっても、素敵です」
「中も早く見てみたいね」
「お宝がたくさんありそうね」
ヤスコが皆から「不謹慎だ」などと注意されていると、
エルフの兵士がやって来た。
「リ・エスティーネ王国の友好使節団の皆さんですね。
どうぞこちらへ。国主のミレイア=フォレスタがお待ちです」
大きな階段梯子を上り、アンナは奥に見える世界樹を見上げていた。
そして、謁見の間へと通された。三つの旗の下、三つの椅子が置かれ、エルフ、ドワーフ、獣人の各代表が座っていた。皆アンナたちを見る目は鋭い。
アンナたちが跪き、口上を述べる。
「リ・エスティーネ王国“友好使節団”、只今到着いたしました。
魔王討伐、そして世界の平穏のため、
なによりルゼリアの皆様との友好の懸け橋となるため、
勇者カミシロ・アンナ、罷り越した次第です。
どうぞよろしくお願い致します」
国主ミレイア=フォレスタがそっと立ち上がり、微笑んだ。
「ようこそ、“友好使節団”の皆さま、そして“勇者”カミシロ・アンナ。
遠路はるばるご苦労様です。皆様の到着を歓迎いたします。
さぁ顔をお上げください」
そう言ったミレイアの笑顔、アンナを見つめるその視線に、
(何か心の奥まで見透かされているような。嫌な気持ちじゃない……だけど)
何かを測られているような居心地の悪さを感じているのだった。




