第六話 懺悔はつらいよ
処刑が終わり、
寅二郎たちはトンペティたちと“武聖楼”へとやって来ていた。
「今夜は今回の祝勝会!皆、ご苦労であった。乾杯!」
トンペティの音頭で皆グラスを打ち合わせ、宴会が開かれた。
皆、昼の凄惨な場面を忘れようと言うのか、
大きな声で騒ぎ酒を呑んでいる。
「おい!トラジロウ、酒がすすんでおらんぞ!呑め呑め」
トンペティが寅二郎のグラスに酒を注ぎ、寅二郎がそれを飲み干す。
「よ!さすが“勇者”!いい飲みっぷり」周りが囃し立てる。
「まあな!さぁどんどん酒持って来い!今夜は飲み明かすぞ!」
そう言って寅二郎は次々と注がれた酒を飲み干していく。
「大丈夫なのか、トラジロウは」シドが眉を寄せ、
「そうだね、でもしょうがないかも。あれだけのことがあったし」
リラはちびちびと酒に口をつけていたが、立ち上がった。
「ちょっと飲みすぎたみたい。部屋で休むね」
そう言って道場を出て行った。
(リラもだいぶ参っているようだな。心配だ)
シドはリラの背中を見ながら、グラスを傾けた。
リラは自分に割り当てられた部屋で、ベッドに横になっていた。
(“正義”ってなんなんだろう。トラジロウ、大丈夫かな)
コンコンっとノックが有り、扉が開く。
「ふっふっふ、リラちゅわん見っけ」立っていたのは寅二郎だった。
「今ならシドの野郎もいない。今夜は寝かせないぞぉ」手をワキワキ歩き出す。
リラは何も言わず立ち上がっていた。
「もっこりいただきま~す!はっはぁ!」寅二郎はパンツ一丁で飛び掛かる。
それでもリラはただ立っていた。
寅二郎の笑い声が途絶えた。
そして、寅二郎はリラの腰辺りに縋りついていた。
リラは何も言わない。
しかし寅二郎が震えているのを感じていた。
「生きてりゃ何とかなるだろ。失敗したってやりなおしゃいい。
何なら逃げたっていいじゃねぇか。そうだろ」
寅二郎はそのままの姿勢で呟いていた。
「なのにあいつら、“正義”が何だってんだ。
生きてりゃ、そうだろ?生きてりゃ……」
「そうだね」リラはそれだけ呟き、まだ立ったままだった。
しばらくの沈黙があった。
そして、
「悪い。今夜だけでいい。今夜だけ、このままで」
寅二郎はそう言った。リラは何も言わず頷いた。
「カッコ悪いこと言ったついでだ。もう一つ頼みがある」
「なぁに」リラが呟く。
「シドにはこの事は内緒で頼む。明日からまた“勇者”やるから。
いつものトラジロウでいるから。だからお願いだ」
「いいよ」
リラの部屋の前ではシドが壁に寄りかかっていた。
(リラの様子を見に来たのだが、……)
シドの胸の内では何か熱いものが駆け巡っている。堪らず天井を見上げた。
(“いつものトラジロウ”か、……待ってる)
シドは静かに、宴会場へと踵を返すのだった。
翌朝、寅二郎たちはトンペティたちに見送られていた。
「師匠!そろそろ行くわ。次なるもっこりちゃんが俺を待ってる」
「おう!いつでも帰って来いよ。もはやここはお主らの家じゃ」
寅二郎とトンペティの会話を苦笑いでシドとリラが眺めていた。
「魔王捜索だろうに」
「ふふ、また騒がしくなっちゃったね」
「じゃあな!行ってくらぁ」
そして寅二郎が歩き出すその背中を見て、シドやリラは微笑むのだった。




