第五話 鎮圧はつらいよ⑦
マッキャオ以下反乱軍を捕縛し、
30人程の集団を並び座らせる。
「武聖トンペティ、城内の確認を完了しました。反乱軍は以上です。しかし――」
場内から響く呻き声に顔を向けたトンペティが、指示を出す。
「悪いが救護班を回してやってくれ。自力では動けんらしい、慎重にな」
そこへ、シドに肩を借りながら寅二郎がやって来た。
「爺ぃ、どういうつもりだよ」寅二郎が睨みつける。
「どうもこうもない。“反乱”を鎮圧した。それが全てじゃ」
「話しただろう!こいつらと戦う理由など無いって!」
「理由ならある。こやつらは“反乱”を起こしたのじゃ」
寅二郎が息を呑む。下を向くがすぐに顔を上げ叫ぶ。
「それでも。……それでもやり方があったんじゃ無いのか!」
トンペティはふぅと一つ息をつき、静かに言った。
「トラジロウよ、おぬし見ておらんかったのか」
すっとマッキャオ以下反乱軍を見回す。
「こ奴らの“正義”を。その“覚悟”を。
こ奴らはな、最初から死ぬ気だったのじゃよ」
寅二郎はぐっと唇を噛む。反乱軍を見回し、マッキャオに叫んだ。
「お前らもこれでいいのか!反乱だぞ!殺されちまうんだぞ!」
マッキャオは縛られたまま、立ち上がった。
「生きていればやり直せる、とでも言いたいのか」
寅二郎は、そう言ったマッキャオの顔を見て何も言えなかった。
諦めでもない、絶望でもない。ただ“正義”を叫びたかった男の顔。
「引っ立てろ」トンペティの言葉に彼らは連行された。
「お主らも良くやってくれた。処罰はミラステラで行う。帰るぞ」
トンペティと共に、寅二郎たちもミラステラへと帰ることになった。
その馬車の中、リラはずっと下を向き、誰一人口を開く者は無かった。
ミラステラの刑場。
普段使われることの無いこの場所に大勢の市民が詰めかけていた。
中央にギロチン台が設置されている。斧を持った兵士が立っている。
ヴァルニスでの反乱、
彼らの刑がギロチンに決まったのだ。
罪人を連行する通路、そこに寅二郎たちは立っていた。
マッキャオを先頭に寅二郎の横を通り過ぎていく。
その姿を寅二郎は何も言えず、ただ見送っていた。
そして副官が寅二郎の隣を通り過ぎる際、ポツリと呟いた。
「生きていればやり直せる。そうかもしれません。
……でも、やり直せないこともあるんです。この国、いや世界には」
寅二郎は何も言えない。ずっと副官の顔を追い続けた。
そして、次々と刑が執行されていく。
シドは腕を組み、唇を噛みしめる。
リラはすすり泣いている。
それでも寅二郎は何も言えず、
最後まで散りゆく彼らを見続けるのだった。
――ガルディア帝国首都レギオンブルク。
王城の謁見の間でレギウス三世は今回の反乱の報告を受けていた。
「反乱軍は鎮圧され、首都ミラステラで斬首刑に処されました」
「ふむ、ヴァルニスの面目は保てた、というところか」
さして興味も無さそうに言った。すっと目を細める。
「それで?成果の方はどうなっている?」
「は、《リバース》の起動実験は成功しました。再現は可能となりました」
「分かった。下がってよい」
そう言って兵を下がらせたレギウス三世の後ろに、
《調律者》ハルモニアが立っていた。
「帝国の陰謀だ、などと騒がれませんか?」含み笑いを浮かべるハルモニア。
「知らんな。今回は将軍が反乱を起こしただけの事。
今後はより従順な兵士を育成する、とでも言っておけばよい」
ハルモニアに顔も向けずレギウス三世は言う。
「で、“従順な兵”の方はどうなっておる」
「はい、密偵フジコの持ち帰った“歩く炉”、その核のおかげで順調です」
「すぐにでも量産体制に入りたいものだな。
そろそろ動き出すであろう。世界がな」
帝国の皇帝レギウス三世は、世界の歪みをその身に感じ、
歪みのもたらす世界、その先へと思いを巡らすのであった。




