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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第五話 鎮圧はつらいよ⑦

 マッキャオ以下反乱軍を捕縛し、

 30人程の集団を並び座らせる。


「武聖トンペティ、城内の確認を完了しました。反乱軍は以上です。しかし――」

 場内から響く呻き声に顔を向けたトンペティが、指示を出す。


「悪いが救護班を回してやってくれ。自力では動けんらしい、慎重にな」


 そこへ、シドに肩を借りながら寅二郎がやって来た。


「爺ぃ、どういうつもりだよ」寅二郎が睨みつける。


「どうもこうもない。“反乱”を鎮圧した。それが全てじゃ」


「話しただろう!こいつらと戦う理由など無いって!」


「理由ならある。こやつらは“反乱”を起こしたのじゃ」


 寅二郎が息を呑む。下を向くがすぐに顔を上げ叫ぶ。


「それでも。……それでもやり方があったんじゃ無いのか!」


 トンペティはふぅと一つ息をつき、静かに言った。


「トラジロウよ、おぬし見ておらんかったのか」

 すっとマッキャオ以下反乱軍を見回す。


「こ奴らの“正義”を。その“覚悟”を。

 こ奴らはな、最初から死ぬ気だったのじゃよ」


 寅二郎はぐっと唇を噛む。反乱軍を見回し、マッキャオに叫んだ。

「お前らもこれでいいのか!反乱だぞ!殺されちまうんだぞ!」


 マッキャオは縛られたまま、立ち上がった。


「生きていればやり直せる、とでも言いたいのか」


 寅二郎は、そう言ったマッキャオの顔を見て何も言えなかった。

 諦めでもない、絶望でもない。ただ“正義”を叫びたかった男の顔。


「引っ立てろ」トンペティの言葉に彼らは連行された。


「お主らも良くやってくれた。処罰はミラステラで行う。帰るぞ」


 トンペティと共に、寅二郎たちもミラステラへと帰ることになった。

 その馬車の中、リラはずっと下を向き、誰一人口を開く者は無かった。


 ミラステラの刑場。

 普段使われることの無いこの場所に大勢の市民が詰めかけていた。

 中央にギロチン台が設置されている。斧を持った兵士が立っている。

 ヴァルニスでの反乱、

 彼らの刑がギロチンに決まったのだ。


 罪人を連行する通路、そこに寅二郎たちは立っていた。


 マッキャオを先頭に寅二郎の横を通り過ぎていく。


 その姿を寅二郎は何も言えず、ただ見送っていた。

 そして副官が寅二郎の隣を通り過ぎる際、ポツリと呟いた。


「生きていればやり直せる。そうかもしれません。

 ……でも、やり直せないこともあるんです。この国、いや世界には」


 寅二郎は何も言えない。ずっと副官の顔を追い続けた。


 そして、次々と刑が執行されていく。

 シドは腕を組み、唇を噛みしめる。

 リラはすすり泣いている。

 それでも寅二郎は何も言えず、

 最後まで散りゆく彼らを見続けるのだった。


――ガルディア帝国首都レギオンブルク。

 王城の謁見の間でレギウス三世は今回の反乱の報告を受けていた。


「反乱軍は鎮圧され、首都ミラステラで斬首刑に処されました」

「ふむ、ヴァルニスの面目は保てた、というところか」

 さして興味も無さそうに言った。すっと目を細める。


「それで?成果の方はどうなっている?」


「は、《リバース》の起動実験は成功しました。再現は可能となりました」

「分かった。下がってよい」

 そう言って兵を下がらせたレギウス三世の後ろに、

《調律者》ハルモニアが立っていた。


「帝国の陰謀だ、などと騒がれませんか?」含み笑いを浮かべるハルモニア。

「知らんな。今回は将軍が反乱を起こしただけの事。

 今後はより従順な兵士を育成する、とでも言っておけばよい」

 ハルモニアに顔も向けずレギウス三世は言う。

「で、“従順な兵”の方はどうなっておる」

「はい、密偵フジコの持ち帰った“歩く炉”、その核のおかげで順調です」


「すぐにでも量産体制に入りたいものだな。

 そろそろ動き出すであろう。世界がな」


帝国の皇帝レギウス三世は、世界の歪みをその身に感じ、

歪みのもたらす世界、その先へと思いを巡らすのであった。

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