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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第五話 鎮圧はつらいよ⑥

 寅二郎たちはトンペティと合流するため、

 コロボ城下を走っていた。最早なりふり構わずといった態で走り続けた。

 そのため夜間巡回の兵士たちと鉢合わせしてしまった。


「何者だ!」「止まれ!」兵士たちは騎乗したまま叫び、武器を構える。


「くそ!邪魔だ」


 寅二郎は突き出された槍を掴み、そのまま兵士を引きずり落とす。


「どいてくれ!急いでいるんだ!」絶叫しながら兵士たちと格闘。


 シドも振り下ろされた剣を短剣で受けながら叫ぶ。


「まずいぞ。朝が、夜が明けてしまう」


 二人を必死に追うリラは、

 肩で息をしながら、明け行く空を見上げるのだった。


一方、

 陣幕に腰を下ろしていたトンペティは次々と入る戦況に耳を傾けていた。


「冒険者による城下町の鎮圧が完了しつつある模様」

「負傷者多数、しかし死者はまだ報告有りません」

 順調に聞こえる戦況ながら、トンペティに刻まれた眉間のシワは深い。


(奴らの目的は、おそらく独立などではない。トラジロウ、まだか)


 そんなトンペティの耳に、陣幕の外に響く絶叫が届いた。

「前を開けてくれ!爺に、トンペティに至急伝えなきゃいけないんだ!」

 そして幕が開かれ、寅二郎が走りこんできた。


「間に合った!トンペティ、まだここにいたな」


 寅二郎だけでなく、シドやリラも汗だく。

 三人の衣服には返り血だろうシミがついていた。


「待っておった。話を、聞かせてもらおう」トンペティはすっと眼を閉じた。


「あいつら闇魔法、《リバース》の被験者たちを匿ってやがった!」

 興奮する寅二郎に代わり、シドが説明を買って出た。


 帝国軍がコロボ内で秘密裏に《リバース》の実験を行っていた事。その被験者たちは皆廃人同様の惨状であった事。反乱軍はまさに命がけで被験者たちを守っていた事。


「だから!あいつらと戦う理由なんて無いんだ!」寅二郎が叫ぶ。


 すっと眼を開いたトンペティは立ち上がる。


「行くぞ」そう言い、陣幕を出る。


寅二郎たちも困惑しながらもついて歩いた。


 眼前にはコロボ王城、その城門が聳え立ち、

 城壁の上には反乱軍の兵士が矢を番え、こちらを狙っている。

 ヴァルニス軍も盾を構えいつでも突入出来る態勢だった。


「おいおい、話聞いてくれてたんだろ?」寅二郎が不安げにトンペティに問うた。


 トンペティはそれには答えず、振り返ると寅二郎の肩に手を置いた。


「ご苦労じゃった。お主はここで見ておれ。――全てをな」


そう言った瞬間、肩に置いた手が寅二郎の顎先をかすめた。


「!?」


 寅二郎はガクッと腰を落とし、その場にへたり込んでしまった。


「爺ぃ!これは……、何の、……真似だ」寅二郎は脳を揺らされ動けない。


「奴らの目的は分かった。――だから、お主はそこで見ておくのじゃ」


 トンペティはそう言うと、城門へと向き直り拳を引いて構えた。


「ふぅぅ~」トンペティは息をゆっくりと吐きだす。


 全身から湯気の様な靄が立ち上る。

 シドやリラもその圧を身に受けていた。


「これが武聖の力」

「おじいちゃん、こわいよ」


「今から城門を破壊し突入する。冒険者たちは城を囲み誰も逃すな!」


 オウ!と皆叫びを返す。


「行くぞ!」その声と共にトンペティは拳を繰り出した。


ドガン!


 炸裂音と共に門扉が吹き飛び、城門が揺れるほどの衝撃。

「うわぁ!」城門の上から矢が降り注ぎ、ヴァルニス軍が門内へと雪崩れ込む。

 飛び交う矢をするすると躱しながら、トンペティが歩を進める。


 各地で兵士たちが剣を合わせ、怒号が飛び交う戦場と化した。

 その中を悠々と歩き続けるトンペティ。

 すると王城の扉が開いた。


 奥から反乱軍の首謀者、マッキャオが出てきた。

 そして後ろには副官だろう兵士とローブ姿の集団が続いている。


「武聖トンペティだな。我が名はマッキャオ。そこをどいてもらおう」

 マッキャオは剣を抜く。後ろの集団が詠唱を始める。


「どくわけにはいかん。お主らの目的も分かった」

 トンペティは歩みを止めない。


「ふふ、その身から湧き出る気迫。さすがに武聖。

 しかし、私たちも止まるわけにはいかんのだ」


 マッキャオが剣を振り上げる。その剣に白い光がまとわりついていく。


「その顔、見たか、聞いたのだろう。帝国の所業を。それを許すコロボを。

 わたしたちは帝国、いやこの世界に否を叩きつけなければならない」

 マッキャオの頭上には大きな十字架が顕現していた。


 トンペティは歩みを止め、再び拳を引き構える。拳に気が収束していく。


「この力は集団魔法で収束させた《グランドクロス》。

 この力を持って、世界に我らは問わねばならんのだ、“正義”を!」


 マッキャオはトンペティへと走り出した。


「これが我らの全て!くらえ!《グランドクロス》!」

 巨大な十字架と共に、マッキャオの剣がトンペティへと迫る。


「それでも!」トンペティも走り出す。


「お主らの力では世界には届かんのじゃ!」

 マッキャオの剣とトンペティの拳が交錯する。


 爆風が巻き起こり、戦場に吹き荒れる。


 土煙が晴れていき、


 マッキャオの腹に拳を突き刺すトンペティの姿が見えた。


「ぐふ」鎧は砕かれ、手に持った剣も取り落としたマッキャオが崩れ落ちた。

 そして、各所で起きていた怒号も静まり、コロボ城に静寂が落ちたのだった。

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