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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第五話 鎮圧はつらいよ⑤

 夜となり、裏口の兵士たちが交代するところも確認した。


「さて、行くか」「おう」シドと寅二郎が立ち上がり、音を立てず走り出す。 

「!?」兵士たちに声も上げさせず、昏倒させた。

 兵士たちを縛り、物陰へと隠す。

 リラも合流しいよいよ扉を開き中へと入った。


「くっ」扉を閉めた瞬間、寅二郎たちは顔を顰めた。


「くせえな、何だってんだ、この匂い」


 汗の饐えた匂いや、糞尿の匂い。

 息をするのも、遠慮したくなるような悪臭が立ち込めていた。

 それでも入ってすぐ見えた書棚の裏へと隠れた。


「あ、あれは、檻か」寅二郎が囁く。


 中にはいくつもの檻が並べられ、五人の兵士で見張っている様だ。

 檻の中では、何かが寝そべり呻き声を上げていた。


 寅二郎たちの頭にはすぐにある光景が浮かんでいた。

(エルド!)

(ここにいるのは皆、闇魔法《リバース》の被験者か!)

「これってあの時の」思わずリラが声を上げてしまった。


「あ」


「誰だ!」「何だあいつら」兵士たちが気づき、武器を構える。

「ちぃ!」「やるか!」寅二郎たちも構え、空気が一気にぴりつく。


「何者か知らんが、思い通りにはさせん!」

「この人たちは絶対に渡さん!俺たちが守る」

 兵士たちがじりじりと距離を詰めてくる。


「おい!シド」

「ああ、“この人たちを守る”と言ったな。どういう事だ」

「どうなってんだ、この空気。話し合うってわけにはいかないぞ」

 シドや寅二郎が戸惑う間にも、兵士たちが迫ってくる。


「もうこんなことはさせない!」必死の表情で迫る兵士たち。

 寅二郎たちはその迫力に、じりじりと下がっていたが、

「応援を呼べ!ここは絶対死守だ」一人が叫び、

 一人が表へ走り出そうとした瞬間。


「駄目だ。トラジロウ、やるしかない!」

「くそ!どうなってんだよ!」シドと寅二郎も走り出す。

 檻を庇う様に立つ兵士たちの動きに、

 寅二郎たちの困惑が深まっていく。


「この人たちには指一本触れさせん!」と繰り出される兵士の槍を躱す。

「これじゃ、まるで俺たちがワルモンじゃねぇか」その槍を掴み寅二郎が叫ぶ。


「とにかく今は制圧に集中しろ!」


 シドは応援を呼びに行った兵士に飛び掛かり、

 後ろから掴んだ頭を床に叩きつけた。


 しかし、

 正面入り口から「何だ」「騒がしいぞ」と見張りたちが入って来ていた。

 シドは低い姿勢のまま彼らに迫り、兜の隙間、首当たりへ短剣の柄を差し込む。

 そして、「ぐえ」と嗚咽を漏らす兵士たち。

「ちっ、浅かったか」シドは舌打ちしつつ、兵士たちを蹴り飛ばした。


 寅二郎も槍を奪い取り、

 兵士を蹴り飛ばすとその槍を振り回した。

 兵士たちの持っていた剣を叩き落し、

 腕がしびれたのか硬直する兵士たちを殴り倒した。


「ごめんなさい」とリラが歩き出す頃には静寂が戻っていた。


 リラに首を振りながら二人は檻へと近づくと、


「やはり、こういう事だったのか」シドが檻の中で呻く人々を見やる。

 呻き声を上げ、廃人の様に横たわる人々。失禁しているものもいる。


「しかし、檻の中は掃除されてるな。こいつらがやってるんだな」

「ああ、食事も離乳食のようなものが保管されている」

「それって、つまり……」リラがか細い声を上げた。


「ああ、今回の反乱の目的。それは“帝国の人体実験への反乱”

 非人道的な帝国のやり方に反旗を翻したってことになるのだろう」


「おいおい、このままじゃ……、

 トンペティの爺さんが首謀者の将軍を捕まえちまうぞ」


「ああ、急ごう。しかし……」しかし、の後を続けられずにシドは走り出す。


慌てて寅二郎たちも走り出す。皆胸の中にどす黒い靄のような気分を抱えて――

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