第五話 鎮圧はつらいよ④
「トンペティは明日の朝には進軍を開始すると言っていた。
それまでに何が起きたのかを暴き、合流したいところだな」
シドの話を聞きながら、寅二郎たちは検問所を抜けた。
大通りを抜けたその先に、コロボの王城が見える。
「あそこに帝国の将軍ってのがいるんだな」
「なんだかとっても静かに見えるね。それが怖い」
三人は路地へと身を隠すように滑り込み、シドの地図へと目を向けた。
「ここからだと王城の裏側に大きな倉庫街がある。
スクビルの使途不明金はそこの一つに流れていたようだ。
まだ遠いしな、
途中には巡回の兵士がいるはずだ。注意して進もう」
三人は王城から離れるように、遠回りでコロボの街を急ぐ。
派手な看板や、魔鉱石製の豪華な街灯があちこちに立っている。
平時ならば商人や市民たちで賑やかな街であろうことが見て取れた。
「静かに」シドが寅二郎たちを制す。
見ると、騎乗した兵士たちが巡回しているところだった。
反乱軍である彼らだが、落ち着いた風に見える。
無駄口も聞かず、周りに気を配り馬をゆっくりと歩ませている。
騎馬隊が通り抜けた後、
寅二郎たちは彼らの背中を見送っていた。
「士気は高そうだな。どう見た?シド」
「ああ、将軍の人徳なのか、共通の思いが何かあるのか」
「共通の思い、ってどういう事?」とは、リラ。
「その答えは、あそこにあるだろう」
シドはそう言って指を差した。
シドの指さした先にはコロボの倉庫街。
一か所だけ兵士が二人、見張りに立っている。
「あそこが今回の目的地ってことだな」
「ああ、何が待っていることやら」
寅二郎たちは息を顰め、見張りのいる倉庫の周りを一周した。窓は摺りガラスとなっており、中の様子は見えなかった。そして倉庫の裏側にもう二人、見張りが立っていた。
「厳重だな。士気も高い。忍び込むのも骨が折れそうだ」
「隙が出来るのを待つ。ってのも厳しいか?」
「時間が無い。交代時間を見極め、夜にでも急襲するべきだな」
寅二郎たちは物陰へと身を隠し、しばらくのことだった。
「誰か出てきたぞ」シドが囁く。
見ると若い兵士が、兜も被らず出てくるところだった。
向かいの積み荷の裏辺りでいきなり、おええと盛大に吐いた。
「!?」寅二郎たちは慌てて自分の口をふさぐ。
兵士はしばらく嗚咽を繰り返した後、口元をぬぐうと中へと戻っていった。
(中で一体何が……)
中で何が起きているのか想像するほど、胸の奥が重くなる。
寅二郎たちはそれ以上考えるのをやめ、
より深く身を隠して夜を待つことにした。




