第五話 鎮圧はつらいよ③
コロボ王城のテラスから城下を眺め、
帝国の元将軍、マッキャオは呟く。
「帝国も、帝国にいいようにされるこの国も、全てはクソだ」
反乱の首謀者と言えるような激情を吐露するでもなく、その顔は穏やかだ。
「将軍、王下の占拠完了いたしました。
しかしヴァルニス軍が迫っております」
副官からの報告に、鷹揚に頷く。
「さすがに早いな。しかし私ももう止まるつもりは無い。
私は私の正義をここで叫ぶ。――お前たちには迷惑をかけるな」
マッキャオの言葉に副官が首を振る。
「将軍、私たちも思いは同じであります。
あれを見ておいて帝国にはもう戻れません」
二人は城下の一点を眺め、
吹き始めた風に吹かれるまましばらく立ったままだった。
一方、トンペティ率いる鎮圧部隊はコロボの検問所近くに陣を張っていた。
「敵の首謀者は帝国の将軍、マッキャオ。
王城以下城下町まで占拠が進んでいる模様」
斥候の報告にトンペティは労をねぎらい、下がらせた。
「儂ら本隊はまっすぐ王城へと進む。
冒険者諸君は城下町の鎮圧に当たってもらいたい。
コロボの住民もおる、出来れば皆捕縛してほしい。出来るかな?」
「俺たちだって殺しなんてしたくはない。それで構わないんだな?」
冒険者の一人が声を上げ、トンペティが頷く。
「うむ、今回は首謀者も分かっておる。頼んだぞ」
そして、PTリーダーたちが陣幕を出る中、
トンペティは寅二郎を呼び止める。
「トラジロウ、シドやリラをこちらへ呼んでくれ」
そうして4人だけとなった陣幕でトンペティが言った。
「お主ら、スクビルの件で使途不明金の話を聞いておるな」
「ああ、帝国が何かしていたようだ」シドが返す。
「そこだ。お主らは帝国がコロボ内で何をしておったのか調べて欲しい」
「お金の行先が城下町にあるって事ね?」リラが言い、
「シドなら分かりそうか?」とは、寅二郎。
「そうだな、街の地図でもあれば分かるだろう。
アーデルの言葉を借りれば、金の流れは嘘を吐かない。だな」
シドは地図を取りに陣幕を出て行った。
寅二郎も立ち上がり出ようとするが、
リラは座ったまま何か意を決したように言った。
「トンペティさん、怖い顔してる。大丈夫だよね?また皆で笑えるよね」
リラの、胸の前で組まれ震える手を見ながらトンペティが言った。
「ああ、そのために儂が出張って来たんじゃ。
またすぐにでも、もっこりさせてくれるんじゃろ?」
トンペティの微笑みに、リラは微笑みを返し陣幕を出た。
「これでいいんじゃろ?トラジロウ」
「はは、さすが師匠。その調子で頼むぜ!」
寅二郎も陣幕を出て行く。
トンペティはその背中を見ながら一つ息を吐く。
(皆で笑える、か。早く治めればあるいは……しかしのぅ)
トンペティの不安はリラの笑顔でも晴れることは無かったのだった。




