第五話 鎮圧はつらいよ②
ミラステラ宮殿では国主マルセロ・ディアスと、
武聖トンペティが緊急会議を行っていた。
「老師、まずいことになった」
「そのようじゃな。街中この件でもちきりじゃ」
「反乱の首謀者、帝国の将軍なのだ」
「なんとまぁ」
「コロボは帝国が近く、帝国に魔物の討伐なども任せることが多い。
しかし今回、それがコロボ国内での反乱。
ヴァルニスの治安維持力が問題有りだと各国に喧伝しているようなものだ」
「早く鎮圧し儂らの力を誇示せねばならんという事じゃな」
マルセロは我知らず、ひじ掛けを強く握りしめていた。
「問題はそれだけではない」
「何故今コロボで反乱がおこったのか、じゃな」
「ああ、会計局の報告で、
コロボの隣国、スクビルから使途不明金が流れていた」
「その使い道に帝国の影が見える、と」
「そんな状況で帝国に介入でもされれば、混乱は避けられん。
最悪の場合……」
「帝国に乗っ取られる、か」
「帝国のレギウス三世には早馬を飛ばし、
この件をこちらで片付ける話だと伝える。
しかし、もたつくようでは帝国は意気揚々と乗り込んで来よう」
「話し合うという段階ではないわけじゃな。首謀者の処遇は?」
「逮捕できればそれに越したことは無い。
しかし今回は時間が無い。
すでにコロボの王城を占拠し、独立を宣言している。
被害も甚大だ」
「儂の判断に任せる、という事じゃな。すぐにでも動こう」
「ああ、ミラステラのギルドに冒険者を集めさせている。
老師の部隊と共に運用してほしい」
そうして武聖トンペティは振り返り、部隊を伴い宮殿を出た。
(コロボ国内で何が起きた?
レギウス三世め、我が国内で一体何を……)
国主としてマルセロ・ディアスは一人、
椅子へと深く身を沈め息を吐くのだった。
そして、ギルドにトンペティが姿を現した。
寅二郎が声を掛けようかとそちらを向くが、
トンペティは他を圧する気配を漂わせ、
脇目も降らず奥へと消えた。
「師匠、余裕が無さそうだな」
「ああ、よほどの事態のようだ」
「トンペティさん、ちょっと怖い」
三人の声を遮るように、ギルド職員の叫びがギルド内に響く。
「武聖トンペティがいらっしゃいました。
会議を行いますのでPTリーダーの方だけ、
ギルドマスターの部屋へとお願いします」
ざわつく受付フロアを寅二郎は見回し、
「ま、ちょっと行ってくる。待っててくれ」
そう言ってギルドマスターの部屋へと入って行った。
(帝国への使途不明金、その使い道が関係しているのだろうか)
自然と祈りを捧げるリラの隣。シドは不安が広がるのを自覚していた。
ギルドマスターの部屋には、各PTリーダーたちが所狭しと立っている。
「皆今回の件への協力を感謝する。向こうの状況は早馬で偵察部隊を送っている。
詳しくはあちらで合流し再び会議を行う。今回は速さを重視する。行くぞ!」
トンペティの声と共に皆が部屋を出る。
寅二郎も後に続こうとするが、
「トラジロウ、いてくれて助かる。今回は“勇者”の力、当てにさせてもらう」
いつになく鋭いトンペティの視線に、寅二郎が返す。
「ああ、任せてくれ。“もっこり同盟”。だからな」
トンペティはそのセリフに下を向くと、くっくと笑い出す。
「ああ、そうじゃな。お主は“それ”がいい」
こうしてギルドの用意した馬車に乗り、
“コロボ反乱鎮圧部隊”が出発したのだった。




