第五話 鎮圧はつらいよ①
帝国と国境を接する国コロボ。
その郊外のとある施設で男が叫ぶ。
「何なんだ!これは。こんな……、こんなはずでは……」
男の周りには部下であろう男たち。
皆、鎧姿のまま俯いて立ちすくんでいる。
目の前には項垂れた人々が横たわり、その様はまるで廃人の様だった。その光景に男は全身を震わせ、拳は音を立てるほどに強く握りこまれたままだった――
コロボの隣国、スクビルでの護衛依頼を終え、首都ミラステラへと帰還した寅二郎一行。馬車内でずっと隣に座っていたアーデルから離れるとシドが言った。
「着いたな。アーデル、俺たちはそろそろ。ギルドへ行くことにする」
「ええ、もう次の仕事なんですね。お体にはお気をつけて」
そうして、ずっとシドへ手を振り続けるアーデルと別れた。
「ちぇ、俺だって仕事出来るっての!なぁリラちゅわん」
「いつまでもグダグダ言わないの。みっともないよ」
「ああ、男なら黙って受け入れろ、トラジロウ」
「けっ!モテる男のご意見は耳に痛いね」
ぼやき続ける寅二郎をなだめつつ、ギルドの扉を開いた。
そこへ、ギルド職員の叫びが響いた。
「冒険者の皆さん!緊急クエスト発生です!
帝国と接するコロボで反乱が発生、
即時鎮圧するよう依頼が発出されました!」
ギルド内は騒然となり、ギルド職員が次々と出入りする。
「コロボと言えば、あの帳簿の!」シドも叫び、
「スクビルの隣だっていう国のことか!」
「ついさっきまで行っていたのに」
寅二郎たちがギルドの受付へと歩き出したところへ、また一報が入った。
「ヴァルニスとしても軍を動かす模様。総指揮は武聖トンペティ。
このギルド内で作戦会議を行います。皆さんこのまま待機でお願いします」
「早いな」「武聖トンペティが動くのか」「相手の規模はどれほどだ」
ギルド内のざわめきが一段と大きくなり、寅二郎たちは窓口で話しかける。
「おい、トンペティの爺さんが動くって?」
「すみません、こちらとしてもまだ情報が錯綜しております。
落ち着いて、あちらの席でお待ちいただくようお願いいたします」
混乱するギルド職員に言われ、寅二郎たちは受付を離れた。
しかし、ざわめきが広がる一方、心に重いものが乗ったようで、
椅子を前にしても誰一人腰を下ろす者はいなかった。




