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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第四話 天然系の護衛はつらいよ③

 事務所前に馬車が停まり、

 サマルクスが見送りに出てくれた。


「それじゃトラジロウ、頼んだぞ」

「おう、任せろ」


 寅二郎たちのその姿に不服気な表情のアーデル、

「子供じゃ無いんですから」そういいながらも、馬車の昇降口で躓いた。


「危ない!」寅二郎がアーデルを支える。


「すみません、ありがとう」

「いやいや」


 寅二郎とアーデルのやり取りに、シドやリラはため息をつく。


「先行きは不安だな」

「トラジロウの鼻の下、随分伸びちゃって。もう」


 デレデレとアーデルを見つめる寅二郎。

 それを心配そうに眺めるシドたちの乗った馬車が、

 スクビルへと向かい走り出した。


 ずっと目をハートマークにしている寅二郎を押し退けリラが尋ねた。


「アーデルさん、どうしてこのお仕事に?」

 アーデルは眼鏡の位置を直しながら笑顔で言った。


「小さい頃から数字が好きだったの。計算すれば答えが必ず同じになる。

 数字は嘘を付かないからね。友達と遊んでいるより帳簿とにらめっこ。

 そんなこんなでこの仕事に就いていたって感じかな」


「それは偉いなぁ。俺は数字には無頓着だからなぁ。はっはっは」

「トラジロウはもうちょっとお金にも関心持ってよね。もう」


「だから帳簿で嘘なんて吐かせない。不正があるなら見つけ出して見せる」

 相変わらず強気のアーデルに寅二郎やリラが歓声を上げる。


(数字は嘘を付かない、か。しかし帳簿を書くのは人間。

 その辺りの認識の甘さがサマルクスの心配の種ってことだな)

 シドの心配はその後すぐ、現実となるのだった。


 スクビルへと入る直前、その森の中で御者が叫ぶ。


「危ない!」その声と共に馬車が急停車した。


「なんだ!」寅二郎とシドが馬車を飛び出し、リラがアーデルに覆いかぶさる。


 見ると、馬車の目の前に大木が横たわっている。

 その大木を乗り越え男たちが。

 後ろからも男たちが走りこんでくる。

 皆スカーフをマスク代わりに巻いている。


「狙いはアーデルか!トラジロウ前を頼む」シドが後ろに走り出し、

「おう!アーデルちゃん、見ててね!」寅二郎が前に走り出す。


 驚くほど速やかに計六人の男たちを取り押さえた。


「何だ、こいつら?弱すぎないか?」

「ああ、ただの嫌がらせだったらしいな」


「くそ、こんな腕利きいるなんて聞いてねぇぞ」「いてて」

 口々に言う男たちを縛り、シドは御者と何やら相談している。

 寅二郎は微笑みながら馬車へと歩いていく。


「リラ、アーデル。無事か?」


「うん大丈夫。ありがとうトラジロウ」

 リラとアーデルが馬車から降りてきた。


「あの、シドさんは何を?」アーデルがシドを探す。


「ああ、襲ってきたやつらの処遇をな。

 スクビルも近いし検問所に引き渡そうって。

 悪いがあいつら連行するから、馬車の速度はちと遅れることになる」

 そう言って寅二郎が歩き出す。


「ちょっと見てろよ」寅二郎は横たわる大木を掴むと、


「よいしょ!っと」気合と共に横へ投げ捨てた。


 そして、


「見てた?アーデルちゃん」と、アーデルに力こぶを見せつける。


「それがなきゃカッコいいのにね」


リラとアーデルの苦笑いをきっかけに、

馬車はスクビルへと再出発するのだった。

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