第四話 天然系の護衛はつらいよ②
ミラステラ宮殿からほど近い洋館。
それが会計局の建物だった。
中ではどの部屋でも書類と格闘する局員の姿が見られ、活気のある職場であることが見て取れた。《監査局》と書かれた部屋へと入ると奥のデスクにサマルクスの姿が見えた。
「よう、来てくれたな。
武聖トンペティの所で休暇中だったらしいが、悪いな」
そう言って勧めてくれた椅子に、寅二郎たちが腰を下ろした。
「早速だが、急ぎの依頼だそうだな」シドが口を開く。
「ああ、護衛の依頼をしたくてな。おい、アーデルこちらへ」
アーデルと呼ばれた女性がこちらへと歩いてくる。
グレーのジャケットにタイトスカート。
事務系のお堅い服装にブロンドをアップにまとめている。
「お呼びですか、サマルクスさん」そう言い丸眼鏡の位置を直すアーデルに、
「おお!もっこりムチムチお姉さん!」寅二郎が飛び上がる。
アーデルの装いは大人しい制服のはずだが、腰やお尻のあたり、サイズが合っていないのかパツパツだ。胸に至ってはボタンがいつ弾けてもおかしくない迫力。
今にも飛び掛かろうとする寅二郎を、シドやリラが押さえつけている。
「何なんです?この人たち」
アーデルが一歩下がり、
寅二郎が落ち着くまでしばらく依頼の話は進まないのであった。
「ああ、ゴホン」サマルクスが咳払いを一つしてようやく依頼の話が始まった。
「こちらはアーデル。今回スクビルという帝国との貿易も多い商業国へ査察に行くことになってね。指揮を執ってもらう。そしてその査察での護衛をトラジロウたちにお願いしたいんだ」
「ですから、護衛も何も先方には通知もしています。問題有りません」
アーデルのセリフにため息をつくサマルクス。
「この通り、彼女は周りが見えなくなることがあってね。
それでも彼女は幹部候補。今回の件には昇進もかかっている」
「なるほど、今回の査察に妨害が入るというわけだな」
シドが頷くが、アーデルは胸を張る。
「妨害が何だと言うんです!帳簿は嘘をつきません」
「彼女の、帳簿を見る目は確かなんだ。しかしその他がね……
事前通告なんてしたら、
『帳簿操作しておいてくださいね』と言ってるようなもんだ」
ぼやくサマルクスに、アーデルが声を上げる。
「ですから!帳簿操作なんてされても私が見抜いて見せます!」
そういってデスクを叩くアーデル。そして大きく跳ねる胸。
それを見ながら寅二郎が言った。
「ああ、ムチムチ、じゃなかった、アーデル。やっぱり見てらんねぇな」
「何です?」
「カジノの時もあんなことになったしな。受けるぜ、サマルクス。この依頼」
未だ不審げな表情のアーデルを見ながら寅二郎が言った。
「いいだろ?シド、リラ」
「ああ、そうだな」
「ええ、アーデルさんがちょっと心配だもんね」
それでも不服気なアーデルを睨み、サマルクスが言った。
「決まりだな。アーデル、これは業務命令だ。
トラジロウたちと共にスクビルでの会計監査、見事に果たして来い!」
こうして寅二郎一行は、
会計監査員アーデルの護衛依頼を受けることになったのだった。




