第四話 天然系の護衛はつらいよ①
“武聖楼”での送別会から一夜明け、
寅二郎たちは武聖トンペティらに見送られて、
門前で別れの挨拶を交わしている所だった。
「お世話になりました」
「楽しかった。また来るね」
「師匠、またな」
「お主たちならいつでも歓迎じゃ」
寅二郎たちは皆笑顔で、いよいよ出ようという背中に声がかかった。
「ああ、いたいた。間に合った」
寅二郎たちが振り返ると、
若い男がこちらへ走って来ていた。
肩で息をしている男が身分証を掲げながら言った。
「私はマルコ。ヴァルニス会計局の人間です」
ようやく息も整った様で、寅二郎の方を見ながら続けて言った。
「トラジロウさん、
会計局のサマルクスから依頼が有り、探しているところでした」
「サマルクスが、俺に?」
「はい、急ぎの依頼らしく是非このままご同行を」
「ふむ、急ぎの依頼か、気になるな」
「サマルクスさんなら知らない仲じゃないし、急ごう」
「サマルクスの依頼?……どうせ面倒な帳簿仕事だろ」
当然の様に渋る寅二郎だが、シドリラに腕を引っ張られ引きずられていった。
「じゃあな、師匠!行ってくるわ」
寅二郎の声に「おう!行ってくるがいい。気を付けての」
微笑みながら見送るトンペティは、寅二郎の背中に呟いていた。
「“勇者”が嵐を呼ぶのか、嵐に呼ばれるから“勇者”なのか。
いずれにせよ、あ奴の前途はまだまだ穏やかには済みそうにないわい」
トンペティはヴァルニスの輝く海を眺め、寅二郎たちと過ごした日々が嵐の前の静けさであったことを予感しているのだった。
一方、ミラステラの会計局事務所では――
「サマルクスさん、私に護衛なんて必要ありません」
「いいから、トラジロウたちは見つかったんだ、もう少し待て」
今すぐにでも部屋を出て行こうとする女性に、サマルクスは頭を抱えていた。
(出来る奴だが、こういうところがあるからなぁ。
今は特に……トラジロウ、早く来てくれ)
デスクの前でサマルクスを見下ろす彼女から目をそらし、
サマルクスはため息をつくのだった。




