幕間:闇より深い闇の中で
誰も知らぬ場所――
光一つ見えない闇の中。
それでも何か、というよりその空間自体が蠢いた場所。
そこに声だけが聞こえる。
「どうかな、三魔将が一人、《観測者》エイドスよ」
「ええ、視えていますよ。世界に広がる揺らぎがね」
「うむ、我らが動かずとも勝手に揺らぐ。下らんな、この世界は」
「それでもここまで続いている。面白いとは思わんかね、ノクスよ」
一切の闇の中でも微笑むのが分かる。
「一応お前も私の部下、そのはずなのだが。分からん奴よ」
「それでも処罰、処理しない。それがあなたが大魔王と呼ばれる所以でしょうな」
「ほう、世辞くらいは言うのだな」
「私は《観測者》。視た儘を述べただけですよ」
沈黙。それでもそこは蠢き続ける。
「どちらにせよ、この世界は我が平らげてやろう。
そのために各地へと散った部下たちはどうだ?」
「準備は万端と言った所、あとは何かきっかけでもあれば」
「きっかけ、か。ヴァルニスはどうだ?」
「ええ、帝国が裏で動いているらしく揺らいでいる様子」
「帝国か。ベルゼが《リバース》を見せたからな」
「皇帝がいたく気に入り研究させているようですな」
「《調律者》エイドスは何か言ってきたか?」
時に広がり時に縮む。
「何も。随分楽しそうにやっているようです」
「ふむ、この揺らぎも奴の仕事。そう見れば全て順調と言った所だな」
「御意」
「いずれ私は辿り着く。《リバース》のその先へ。
――その時こそ、この世界は闇へと沈む」
その言葉を最後に声は消えた。残るのは何かが蠢く気配だけだった。




