第三話 助平はつらいよ②
しばらく後に稽古は再開され、
道場内に門下生の気合が再び響きだす。
そんな中、師範代に鳩尾へと何やら塗らせながらトンペティは言った。
「お主らの力、よう分かった。なかなかのものだ。
さすが、カジノの一件を収めた奴らよ」
「あの茶番で何の力が分かったんだよ。トンペティ」
「うるさい、よく聞け。
お主ら聞けば相当な激戦を潜り抜けてきておる。
どうじゃ?
ここらで一度しっかりと休養をとってみては」
「休養ねぇ。しかし魔王捜索もあるしなぁ」
トンペティが立ち上がり、その声には熱がこもる。
「だからこそよ。この先、より危険な道行きとなるであろう。
その前にしっかりと“戦士の休息”を取るべきなのじゃ」
「なるほどな」「ホント大変だったもんね」「準備期間ということか」
三人の声に、微笑みながらトンペティが続けた。
「幸い、ここは観光都市。
市もあるし、ビーチや露天風呂なんかもあるぞ。
海辺の漣にマナを感じ、露天風呂でマナと一つとなる。
いわばこれも修行じゃな」
トンペティの言葉にリラが微笑む。
「じゃぁあたし、水着買ってこようかな。
シドも行くでしょ?ね」
「わ、わた、俺もか?」シドが慌てる。
「市へ行くのだし、護衛してよ。ねぇいいでしょ?トラジロウ」
「ああ、構わねぇけど……」
「行ってくるがいい。明日は浜辺で波と戯れようぞ」
トンペティの言葉にリラとシドは道場を出て行った。
「ふぉっふぉっふぉ」トンペティの笑い声に寅二郎はハッと顔を向け、
「水着に温泉、策士だな。この助平爺」
「何か儂に言いたいことでもあるのか?トラジロウ」
トンペティが顔を向けると、寅二郎は綺麗な土下座で言った。
「師匠と呼ばせてください」
こうして、いつの間にか、もっこり同盟が締結されたのであった。
翌日、寅二郎たちはトンペティと共に道場近くのビーチへとやって来ていた。
「わぁ、これが海なのね。あたしちょっと泳いでくる!」
リラはそう言ってパーカーをシドへ渡し、浜辺へと走り出した。
リラの白い肌に、蒼いビキニが良く映える。
ビーチの他の観光客の注目を集めている。
「リラちゅわん、楽しそうだな。水着も良く似合ってる。
それに比べてシド、お前せっかくなんだから水着買って来いよ」
寅二郎がシドを振り返り、ため息をつく。
シドはパーカーに、薄手のカーゴパンツ。
日に照らされ汗をかいている。
「お前だって、水着じゃないだろう」
「俺はいいんだよ。別に泳ごうって気もねぇし」
「まぁまぁ、いいではないか。リラのあの姿、眼福じゃよ」
そう言って三人はビーチパラソルを立て、
シートを広げると、しばらくリラの楽しそうな姿を眺めるのだった。
「ああ、楽しかった」と戻ってきたリラと浜辺で昼食を取ると、
「さて、ここからが本日のお楽しみ、じゃよ」
そう言ったトンペティが、浜辺に何やら立て始めた。
「おい、漁網なんか広げてって、まさか“ビーチバレー”か?」
「そうじゃ、“びいちばれぇ”じゃ。
負けた方が勝った方の言うことを、
何でも一つだけ聞く。そういう勝負じゃ」
「ええ?何でもぉ」「お前らの魂胆が見え見えすぎるな」
リラやシドはあまり乗り気では無い様子。
すかさず寅二郎とトンペティ、
“もっこり同盟軍”はそろって土下座していた。
「頼む、この通りじゃ」トンペティたちの姿にリラは微笑む。
「いいよ。ビーチバレー?何か楽しそうだし」
「リラ!」シドは声を上げるが、
「ふっふっふ。シド、忘れたとは言わせんぞ。レギオンブルク。
“もっこり大作戦”の借り、しっかりと返させてもらう!」
「ふん、返り討ちにしてやろう」
こうしてシドリラVSもっこり同盟のビーチバレー対決が幕を開けた。
しかし、
「こら!トンペティ、リラの胸ばっかり見てんじゃねぇ」
「馬鹿、トラジロウ!貴様シドにやられすぎじゃ!」
寅二郎たちの連携はズタボロで、
「はい!シド行ったよ」
「任せろ!これで終わりだ……」
シドのスパイクが寅二郎の顔面にクリーンヒット。
あっという間に勝負は決したのだった。
「あいててて、チクショウ。シドの奴思い切り当てやがって」
寅二郎は全身ボロボロだ。
「儂らの負けじゃ。シドリラよ、望みは何じゃ?」
清々しい笑顔でトンペティが言うと、二人は顔を見合わせ、
「保留、かな。その時が来たらすっごいのお願いするから、覚悟しててね」
いたずらっ子のような笑顔でリラが言い、
「そうだな。俺も後のお楽しみに取っておこう」
シドも微笑むと、みんなで片づけを始めた。
「おい師匠。このままじゃまずくねぇか」
「まだ勝負は終わっておらん。そろそろじゃ」
もっこり同盟がひそひそ、話していると、
「このまま帰ってもいいけど、汗かいちゃったし。
“露天風呂”?そこへ行ってみてもいいかもね」
「確かに。夕日を眺めながらの“露天風呂”、とても良さそうだな」
『キタ!』もっこり同盟が心の中でガッツポーズ。
荷物を抱えながら、二人は心の中で第二ラウンドの鐘を鳴らすのだった。




