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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第三話 助平はつらいよ①

 ヴァルニスの国主、マルセロから紹介された武聖トンペティ。

 その彼と会うために、寅二郎たちは“武聖楼”へとやって来ていた。


 寅二郎は“武聖楼”を楽しそうに見回している。

「おお、何か懐かしい感じがするな。親父の実家に帰省したみたいで」

「お前のいた世界の時の事か?トラジロウ」

「ああシド、あの屋根にある瓦な、こっちじゃ珍しいだろう?」

「確かに、あの様な屋根は見たことがない」

「お屋敷自体も木が使われていて、何だか温かい感じがするね」

「ああリラ、いいよな。あの感じ、ほっとするよな」


「お、あっちは道場かな?うちの爺さんも剣道の師範でな。

 夏休みなんかは帰省して、よくしごかれたもんだ」


 嬉しそうに前世の話をする寅二郎。

 その横顔にシドの胸がチクリと痛む。

(トラジロウは事故で亡くなり、こちらの世界に。

 ――未練は有る、のだろうな)


 そんなシドの気持ちなど知らず、

 寅二郎がずんずんと前を歩く。


「いいね、この活気。気合が外まで聞こえてくる。

 ――たのもう!」


 寅二郎が道場の戸を開くと、

 20人ほどの門下生が向かい合い、

 組み手を行っている。


 その奥で、武聖トンペティが座っていた。

 サングラスの奥の瞳が寅二郎たちを捉える。


 こちらを見据え、

 眉を寄せるトンペティの前に寅二郎たちが立った。


「あんたが武聖トンペティ?俺は冴木寅二郎ってもんだ」

「お前が“もう一人の勇者”か。――それと、おぉ!」


「ぷりちぃがーる!」


 それまでの威厳ある態度が一変。

 リラを見つけるとトンペティが奇声を上げた。

 ぎょっと目を開く寅二郎たち。

 ああまたか、と目を閉じる門下生たち。


 次の瞬間には、トンペティはリラの後ろに回りお尻を撫でていた。


「ひっ!」リラが驚くが、すぐに「この変態!」背後に向かって裏拳を放つ。

 しかし、屈んで避けるトンペティ。


 その素早い動きに寅二郎。

「おお!“オカン”の裏拳を躱すとは。ただもんじゃねぇ!」

「ほっほ!儂の力はまだまだこんなもんじゃ、……っておろ?」

 見ると、シドがトンペティを羽交い絞めにしていた。


「こ奴、なかなかの動き。ん?」


 トンペティはシドの胸甲の弾力に違和感を覚え、

(この圧力、胸筋というより胸?――)

 そしてトンペティの意識を遮る気迫を感じ、前を向くと――


「こぉの、変態じじぃ!」リラの正拳突きがトンペティの鳩尾を貫いていた。


ズドン!


「一本!」師範代の声がかかり、


「こんな、いやこのお方が武聖トンペティ?」


 リラが肩で息をし、シドが羽交い絞めのまま嘆くと、


『ほんと、すみません』


 門下生一同の心の声が道場内に響くのだった。

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