第二話 一攫千金はつらいよ⑭
カジノの件をきっかけに、
フォルトゥナはヴァルニスに併合されることになった。
そして、“国呑みの袋”はヴァルニスが厳重に管理することになり、カジノもヴァルニス管理下で再開されることになった。
「済まないな。しかしカジノはすでにヴァルニスの観光資源の一つでな」
サマルクスが寅二郎たちに頭を下げた。
「“政治”とかって奴だろ。そんなことはどうでもいいんだ」
寅二郎が手を振る。
ここはエンダープへ渡る際使った港町、その聖ローマン教の教会。
寅二郎たちはエルドの様子を見に立ち寄っていたのだ。
「エルドさん、少しずつだけど話も出来るようになってきたって」
リラが瞳を潤ませながら、エルドの手を擦ってやっている。
「元気になったら顛末を話してやらないとな」
寅二郎が笑顔でエルドの肩に手を置いた。
シドも腕を組みながらその様子を微笑んで見ている。
「それでな、トラジロウ。お前たちを国主マルセロ・ディアス卿に会わせたい」
「何故だ?サマルクス、お前の護衛依頼ならここで報酬でもいいんだぜ?」
「お前たちは今回の功労者だ。このまま帰す訳にはいかないな。
それに、マルセロ卿もお前たちに会いたいと言っている」
「ええ?そんな偉いおっさんに、別に俺、会いたくねぇぞ」
「ヴァルニスは一大観光都市。有名なビーチなんかもあるぞ?」
「何?ビーチってことは……」
「ああ、それだよ」サマルクスの眼鏡が光る。
「もっこりビキニ!」寅二郎は飛び上がった。
「行くぞ!すぐにでも。いざ、ヴァルニスのビーチへ」
「もう、トラジロウはすぐそれなんだから」リラはため息をつき、
「この馬鹿。国主様に会うんだろ」シドは寅二郎の頭を叩く。
しかし、
(サマルクス、何故トラジロウが女好きだと知っている?
今回はそんな素振りも見せなかったはずだが……)
と、隣で微笑むサマルクスに不安を覚えるのだった。
そうして寅二郎たちはサマルクスの手配した豪華な馬車でヴァルニスの首都、ミラステラへと入った。青・白・金で彩られた巨大な宮殿《ステラ宮殿》に馬車が停まる。兵士について謁見の間へと通された。
壁に掛けられた海図や航路を描いた大タペストリーの下、正面に5つとその両側に幾つかの椅子が並び、中央に国主マルセロが座っていた。
「よく来たトラジロウ一行。私が国主マルセロ・ディアスだ」
シドやリラに遅れて寅二郎が跪く。
「サマルクスから今回のフォルトゥナの件、顛末を聞いた。
大した貢献だったと聞いている。さすが“勇者”だな」
マルセロの言葉に寅二郎たちに緊張が走る。
(ヴァルニスでもトラジロウの素性を――)
シドの手のひらに汗が滲む。
「いやいや、そう緊張せずともよい。
お前をどうこうしようというのでは無い。
旗印としての“勇者”ならアンナたちがいるしな」
「へぇ、アンナたちと会ったのか、マルセロさん」
「こら、マルセロ卿でしょ」リラに頭を叩かれる寅二郎。
(“勇者”としてのトラジロウが必要ではない?では何故ここへ?)
シドの心の問いに、マルセロが答えた。
「武聖トンペティに会わせてみたい。そう思っただけのことだ」
「トンペティ?」「武聖?」寅二郎やリラが首を捻る。
(武聖トンペティ、マナ操作の達人と聞くな)シドがトンペティに思いを馳せる。
「レオニス四世もお前は自由にさせる意向のようだしな。
特にこの国に縛るつもりは無い。
ただ武聖トンペティとの出会いで何が起こるか見てみたい。
それだけだ」
マルセロが兵士に合図をすると、寅二郎に袋を渡した。
「これは今回の依頼の報酬だ。受け取ってほしい。本当に助かった。
武聖トンペティの件、頼んだぞ」そう言われ、寅二郎たちは退出した。
宮殿を抜け、照り付ける陽の光に背伸びして寅二郎が言った。
「さっさとトンペティとかって人と会ってビーチに行こうぜ」
そして報酬のどっさり入った袋を掲げ言った。
「一攫千金はつらいぜ」




