第二話 一攫千金はつらいよ⑦
ディーラーの対面にリラ、寅二郎、シドの順で座った。
「やってみたくて座ったけど、ルールがよく分かってないの」
リラの声にシドが答えた。
「二十一を超えたら負け。それだけ覚えとけ」
「それでは“フォルトゥナハンド”、始めますね」ディーラーが声を上げた。
そして、カードを切り始めたディーラーの手元を見ながらシドが思う。
(カードを撫でるような丁寧な切り方。仕込まれているのはカード自体かな)
「それではどうぞ」とディーラーがカードの山を差し出す。
「ああ、じゃあ俺が切ろうか」シドが山を受け取る。
シドもそっと山の縁をなぞるように指を滑らせると、一瞬指を止めた。
しかし、すぐに山の上からごく薄く、それでいてしっかりとした厚みを取った。
そして山を戻す際、取った束を置く位置を、ほんの指一本分、横にずらした。
ディーラーは山を整えるとカードを配り始めた。
それぞれ配られたカードに思い悩む。
(19かぁ、止めるときはスタンド、だっけ)リラは19で止めるようだ。
(コインを手元に置けば、
バニーちゃんの胸、もっと見えるかな)寅二郎は考えていない。
(まぁ、しばらくは様子見だな)シドは口元だけで微笑む。
ディーラーは皆のカードを開く。
今回はディーラーの一人勝ちだ。
そうして、しばらく勝った負けたを繰り返していたが、
ある時ディーラーは手を止めた。
それは一瞬ではあったが、確かに間が出来た。
「おいおい、勝負はまだこれからだぜ!」
寅二郎が催促の声を上げ、勝負が再開される。
徐々にしかし確実に寅二郎が勝ち始め、
ディーラーは笑顔が引きつり出すのを止められない様子。
シドは流れがこちらに来ていることを確信し、笑みを浮かべるのだった。




