第二話 一攫千金はつらいよ③
寅二郎たち一行は、
エルドと共に鉱山の入口へとやって来ていた。
大きな入り口で、トロッコの走るレールが奥まで走っているのが見えた。
奥を見ているエルドが言った。
「ここフォルトゥナは元々鉱山の国だったんだ。
魔鉱石がよく採れたらしい。
しかし、採掘が進み枯れ始めた頃、カジノが出来た。
鉱山労働者たちも街へ降り、
今ではカジノで遊ぶ金欲しさに日雇い生活って塩梅さ」
「そうか、それでここには誰もいないのか」シドが辺りを見回し、
「何だか、放置されたって感じがして寂しいね」リラの声も寂しげだ。
「いや、ここは細々と採掘が続いていた鉱山なんだが、
最近“洞喰いの亜竜”ケイプ・ドレイクが住み着いてな。
残った労働者たちが困って、ギルドに依頼を出しているってところさ」
「じゃぁその亜竜ってのをとっととやっちまおうぜ」
寅二郎のその声で、皆鉱山へと足を踏み入れるのだった。
しばらくは明かりも灯り広い空間が広がっていたが、
徐々に道が分かれ、いくつかの細い穴が見え始めた。
レールの続く明るい道もあれば、光の届かない穴もあった。
ギルドでもらった地図を見ながらシドが言った。
「まずは広い道を行けるところまで行こう。
相手の姿も見えなくては戦いづらいしな」
シドの指示に従い、固まりつつ歩く。
「リラちゅわん、もっとこっちへ、さぁ俺の腕の中へ」
馬鹿、と言われビンタを食らっている寅二郎に苦笑いのシドだったが、
「し、静かに」指を立て皆を止まらせる。
オオオオオーーっと低く響く咆哮が聞こえてきた。
「こだまして方向がよく分かんねぇな」
「静かに。……こっちだ」
シドが細く暗い穴を指差す。
ちょうどシドの背丈と同じくらいの穴だ。
「ある程度進めば、また少し広い場所に出るようだが……」
「しかしここにいるのなら、早く行こう」
エルドのセリフに寅二郎が難色を示す。
「この狭さじゃ剣も振れねえぞ。途中で出会っちまったら……」
「ああ、逸る気持ちも分かるがエルド、ちょっと待ってくれ」
「すまない、少し焦っている様だ」
シドにも言われエルドが息をつく。
「無事に帰らないと、せっかく勝ってもカジノで遊べないよ」
リラが笑顔で軽口を言い、皆にも落ち着きが戻った。
「なぁシド。炎の魔法は出せるか?」
「ふむ、おびき出す気か?トラジロウ」
「まぁそれが出来れば御の字。駄目でも奥までは進めそうだろ?」
「試してみても良さそうだな。幸い誰もいないしな」
作戦会議も終わり、穴の入り口にシドが立つ。
その後ろに寅二郎とエルドが盾を構えて備える。
リラは皆に《サンクチュアリ・シールド》、防御魔法をかけてまわる。
「行くぞ、炎よ、敵を貫け《ファイア・アロー》!」
シドの詠唱と共に、指先から炎の矢が飛び出した。
ギャアアアーーー痛々しい咆哮が轟く。
しかし、
「ちぃ。奥へと逃げ出したようだ」シドが腰の短剣に手を添える。
「い、行こう!」エルドが興奮気味に言い出し、
「しゃあねえな。俺が前で行く。いいな?」寅二郎がシドの顔を見る。
「ああ、十分に気を付けてくれ」シドが道を開ける。
寅二郎が盾を構え前を行く。後の三人が息を顰め続く。
途中、焼け焦げた場所を発見。壁や床には暴れたらしい爪痕が残る。
そして、広い場所への光が見える辺りで、威嚇音が響く。
グルルルル。
亜竜がそこにいた。
馬車の荷車ほどもある巨体。左目の上辺りには焼け焦げた跡が見える。四つ足を踏み鳴らし、口からは炎が燻ぶるように揺らめいて見えている。
「亜竜がダメージを負っているぞ!」エルドが声を上げる。
「いいから、ちょっと待て!」寅二郎が後ろ手に制止する。
「思ったより天井が低い。それに亜竜の咆哮の度に何やら揺れるな」
シドが天井を見ると、むき出しの岩が所々揺れているのが見えた。
亜竜が踏みしめる度に天井から砂が落ちる。亜竜が寅二郎たちに気付いた。まっすぐに寅二郎たちを見据え、煙交じりの息を吐き出す。
「下手に暴れまわられると手間だな。トラジロウ、動き出す前に止められるか?」
シドの言葉に、寅二郎が答える。
「任せろ」
寅二郎がじりじりと前に出る。その身に《ストレングス・アップ》の光。
「ありがとう、リラちゅわん。――さて、行くか!」
寅二郎の叫びと共に皆走り出す。
亜竜も突進を開始。爪を振り上げ寅二郎に振り下ろした。
「おらよ!」
盾で爪を受け止めた寅二郎が、そのまま亜竜を担ぎ上げるように潜り込む。
「風よ!」シドの風魔法が亜竜の眼を切り刻み、
「うおおおおーー!」
寅二郎が持ち上げ丸見えとなった腹に、
エルドが剣を突き刺す。
しかし、エルドの剣が鱗に弾かれ、刃が滑る。
「ちぃっ!」それでも無理やり体をねじ込み、ようやく刃が腹に届いた。
ガアアアアッっと、亜竜が断末魔の叫びを上げ、のたうち回る。
寅二郎が跳ね飛ばされ、シドやエルドを巻き込み壁へと叩きつけられた。
亜竜はしばらくのたうち回ったが、やがて仰向けのまま絶命した。
リラの治癒魔法を受けながら、寅二郎が言った。
「終わったな」
「ああ、上出来の部類だな」
シドが所々ヒビの入った壁を見ながら言った。
「ありがとう。本当にありがとう」エルドが頭を下げた。
「エルドはこれからもう一勝負だな」寅二郎が言い、
「ああ、運が向いてきている気がする。次は、絶対に勝つ!」
「おいおい、調子のいい奴だな」
シドが呆れながらも笑顔で言った。
そして、皆笑顔でギルドへと報告へ戻るのだった。




