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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第六章 商業都市国家群ヴァルニス編
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第二話 一攫千金はつらいよ③

 寅二郎たち一行は、

 エルドと共に鉱山の入口へとやって来ていた。

 大きな入り口で、トロッコの走るレールが奥まで走っているのが見えた。


 奥を見ているエルドが言った。


「ここフォルトゥナは元々鉱山の国だったんだ。

 魔鉱石がよく採れたらしい。

 しかし、採掘が進み枯れ始めた頃、カジノが出来た。

 鉱山労働者たちも街へ降り、

 今ではカジノで遊ぶ金欲しさに日雇い生活って塩梅さ」


「そうか、それでここには誰もいないのか」シドが辺りを見回し、

「何だか、放置されたって感じがして寂しいね」リラの声も寂しげだ。


「いや、ここは細々と採掘が続いていた鉱山なんだが、

 最近“洞喰いの亜竜”ケイプ・ドレイクが住み着いてな。

 残った労働者たちが困って、ギルドに依頼を出しているってところさ」


「じゃぁその亜竜ってのをとっととやっちまおうぜ」

 寅二郎のその声で、皆鉱山へと足を踏み入れるのだった。


 しばらくは明かりも灯り広い空間が広がっていたが、

 徐々に道が分かれ、いくつかの細い穴が見え始めた。

 レールの続く明るい道もあれば、光の届かない穴もあった。

 ギルドでもらった地図を見ながらシドが言った。


「まずは広い道を行けるところまで行こう。

 相手の姿も見えなくては戦いづらいしな」

 シドの指示に従い、固まりつつ歩く。


「リラちゅわん、もっとこっちへ、さぁ俺の腕の中へ」


 馬鹿、と言われビンタを食らっている寅二郎に苦笑いのシドだったが、


「し、静かに」指を立て皆を止まらせる。


オオオオオーーっと低く響く咆哮が聞こえてきた。


「こだまして方向がよく分かんねぇな」

「静かに。……こっちだ」


 シドが細く暗い穴を指差す。

 ちょうどシドの背丈と同じくらいの穴だ。


「ある程度進めば、また少し広い場所に出るようだが……」


「しかしここにいるのなら、早く行こう」


 エルドのセリフに寅二郎が難色を示す。


「この狭さじゃ剣も振れねえぞ。途中で出会っちまったら……」


「ああ、逸る気持ちも分かるがエルド、ちょっと待ってくれ」


「すまない、少し焦っている様だ」


 シドにも言われエルドが息をつく。


「無事に帰らないと、せっかく勝ってもカジノで遊べないよ」


 リラが笑顔で軽口を言い、皆にも落ち着きが戻った。


「なぁシド。炎の魔法は出せるか?」

「ふむ、おびき出す気か?トラジロウ」

「まぁそれが出来れば御の字。駄目でも奥までは進めそうだろ?」

「試してみても良さそうだな。幸い誰もいないしな」


 作戦会議も終わり、穴の入り口にシドが立つ。

 その後ろに寅二郎とエルドが盾を構えて備える。

 リラは皆に《サンクチュアリ・シールド》、防御魔法をかけてまわる。


「行くぞ、炎よ、敵を貫け《ファイア・アロー》!」

 シドの詠唱と共に、指先から炎の矢が飛び出した。


ギャアアアーーー痛々しい咆哮が轟く。


しかし、


「ちぃ。奥へと逃げ出したようだ」シドが腰の短剣に手を添える。


「い、行こう!」エルドが興奮気味に言い出し、


「しゃあねえな。俺が前で行く。いいな?」寅二郎がシドの顔を見る。


「ああ、十分に気を付けてくれ」シドが道を開ける。


 寅二郎が盾を構え前を行く。後の三人が息を顰め続く。


 途中、焼け焦げた場所を発見。壁や床には暴れたらしい爪痕が残る。

 そして、広い場所への光が見える辺りで、威嚇音が響く。


グルルルル。


 亜竜がそこにいた。


 馬車の荷車ほどもある巨体。左目の上辺りには焼け焦げた跡が見える。四つ足を踏み鳴らし、口からは炎が燻ぶるように揺らめいて見えている。


「亜竜がダメージを負っているぞ!」エルドが声を上げる。

「いいから、ちょっと待て!」寅二郎が後ろ手に制止する。

「思ったより天井が低い。それに亜竜の咆哮の度に何やら揺れるな」

 シドが天井を見ると、むき出しの岩が所々揺れているのが見えた。


 亜竜が踏みしめる度に天井から砂が落ちる。亜竜が寅二郎たちに気付いた。まっすぐに寅二郎たちを見据え、煙交じりの息を吐き出す。

「下手に暴れまわられると手間だな。トラジロウ、動き出す前に止められるか?」

 シドの言葉に、寅二郎が答える。


「任せろ」


 寅二郎がじりじりと前に出る。その身に《ストレングス・アップ》の光。


「ありがとう、リラちゅわん。――さて、行くか!」

 寅二郎の叫びと共に皆走り出す。


 亜竜も突進を開始。爪を振り上げ寅二郎に振り下ろした。


「おらよ!」


 盾で爪を受け止めた寅二郎が、そのまま亜竜を担ぎ上げるように潜り込む。


「風よ!」シドの風魔法が亜竜の眼を切り刻み、


「うおおおおーー!」


 寅二郎が持ち上げ丸見えとなった腹に、

 エルドが剣を突き刺す。

 しかし、エルドの剣が鱗に弾かれ、刃が滑る。


「ちぃっ!」それでも無理やり体をねじ込み、ようやく刃が腹に届いた。


ガアアアアッっと、亜竜が断末魔の叫びを上げ、のたうち回る。


 寅二郎が跳ね飛ばされ、シドやエルドを巻き込み壁へと叩きつけられた。

 亜竜はしばらくのたうち回ったが、やがて仰向けのまま絶命した。


 リラの治癒魔法を受けながら、寅二郎が言った。

「終わったな」

「ああ、上出来の部類だな」

 シドが所々ヒビの入った壁を見ながら言った。


「ありがとう。本当にありがとう」エルドが頭を下げた。

「エルドはこれからもう一勝負だな」寅二郎が言い、

「ああ、運が向いてきている気がする。次は、絶対に勝つ!」

「おいおい、調子のいい奴だな」

 シドが呆れながらも笑顔で言った。


そして、皆笑顔でギルドへと報告へ戻るのだった。

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