第二話 一攫千金はつらいよ①
寅二郎たちの乗った乗合馬車が山道を行く。
道端には、使い捨てられたつるはしや、
壊れたトロッコが転がっていた。
道自体も整備されており、開発された跡が見て取れた。
「首都ミラステラに行く前に、ヴァルニスの“今”を見ておきたい」
シドの言葉に寅二郎とリラは首を捻る。
「“今”?」
「ああ、ヴァルニスに住むひとたちの“匂い”だな」
「“匂い”って言うと、吟遊詩人リュートさんが言っていたやつだね?」
リラは納得したのか笑顔で返したが、
寅二郎は鼻をひくつかせて言った。
「匂いって言っても山の中の匂いしかしないぞ?」
「本気でそう思っていそうで怖いな。トラジロウは」
シドは盛大にため息を付いた。
そんなシドの様子に寅二郎は慌てて言った。
「ち、違うぞ。冗談で言ったんだって。冗談……ホントだよ?」
汗を一滴垂らしながら言った寅二郎に、リラが言った。
「そういう事にしておいてあげる。で結局どこへ行くの?」
リラの言葉を待っていたわけでは無いだろうが、先頭の御者が言った。
「見えてきやしたぜ。加盟国の一つ、フォルトゥナが」
その言葉に三人が荷台で立ち上がり前方を眺める。
山道を下った先に街が見えた。
“商業都市国家”と言われるだけあり、
どれも洒落た外観の建物が多く見えた。
中でも一際目を引く建物が――
「おい!アレ何だ?」寅二郎が指差し叫んだ。
まるで王宮の様な煌びやかな外観。
城壁で囲まれ大きな庭も見える。
そして屋上には大きな文字が書かれていた――カジノ、と。
「カジノ!」「あれが!」リラやシドも声を上げる。
「ま、この馬車で行くわけじゃないんですがね。俺も行きてぇな」
御者のボヤキを聞き流し、街の停車場で三人は馬車を降りた。
「おお、街の雰囲気。悪いか、これ?みんなにぎやかに見えるぞ」
カジノへ向かっているのだろう、街の人々は楽しそうに見える。
「まずは情報収集がてら、ギルドに顔を出してみよう」
シドが言い、三人で歩き出した。
このギルドで、街の賑やかさの正体、
その一端に触れる事となるとはまだ誰も知る由も無かった。




