第一話 旅立ちはつらいよ
寅二郎たちの乗った乗合馬車がいよいよルゼリアを出発した。
荷台の後ろ側に乗る三人が小さくなっていく世界樹を見ていた。
「本当にいろいろあったなぁ」
背伸びをしながら寅二郎が言った。
その手には傷が残っている。
その手を見ながらシドが相槌を打つ。
「ああ、確かにな。いろいろあった」
シドは、ルゼリアで出会った人々の顔を思い浮かべていた。
かつて敵だった者、共に笑った者、そして――もう会えない者。
「ホントにいろいろな人と出会ったね」
リラはブラククの顔を思い浮かべた時、
少し俯いてしまっていた。
でも、と顔を上げるとリラは言った。
「いろんな人たちがいて、いい国だったと思うよ」
「また来たい。そう思うよ」リラは笑顔で言った。
「そうだな、また来よう。いつかきっと――
そのためにも、まずは魔王ノクスの居所を突き止めないとな」
シドが顔を引き締めて言った。
寅二郎はシドの顔を見つめ、
ふと立ち上がると振り返った。
「おう。
で、次はヴァルニスだったな。どんなところなんだ?」
「商業都市国家群ヴァルニス。
経済の中心で、観光都市としても有名だ。
首都のミラステラはこういわれているほどだ。
“すべてが集まる場所”――とな」
そう言いながらシドも振り返ったが、顔色は曇って見えた。
(吟遊詩人リュートの言葉。ヴァルニスで今、何が起こっている?)
「魔王なんてとっととやっつけて、帰ってこようね、ここに」
そう言いながら、リラはしばらく世界樹を眺め続けるのであった。




