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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第十一話 依頼探しはつらいよ④

「今度こそ、絶対大宴会だぞ。絶対だぞ」


 寅二郎が鼻息荒くギルドの扉を開く。

 苦笑しながらシドとリラも中へと続く。

 中に入ると怒鳴り声が聞こえる。受付の方だ。


「ちょっと!報酬が出ないってどういう事?」


 シドがそちらを見ると、薄い紫髪の女戦士がギルド受付と揉めている様だ。後姿だけだが、手甲や具足に肩当ては見える。しかしカールした髪の垂れた背中は丸出し。しかも形のいいお尻は布一枚、下着にしか見えない。


当然、


「もっこり“ビキニアーマー”!」寅二郎が飛び掛かる。


「この!」

「馬鹿!」


 寸前でシドリラに取り押さえられ、

 パンツ一丁の寅二郎が床に抑え込まれる。


「な、何よ、あんたたち!」

 慌てて振り返る女戦士に、

「いいもん見せてもらったよ」

 涙を流す寅二郎がリラに殴られていた。


 シドも一発寅二郎を殴ると立ち上がり、女戦士に言った。


「驚かせてすまない。しかし、何やら揉めていたようだが」


 取り押さえられ涙を流す寅二郎を見やり、

 シドを見つめると女はため息を一つつき言った。


「ふぅ、ちょっと聞いてよ。それがさ」


 彼女の名前はヴァルナ。商業都市国家群ヴァルニスから護衛依頼でこの街へやって来た。いざ依頼も達成し、報酬を受け取りに来たこの時に「そんな商会は無い」と受付に言われたらしい。


「国を跨ぐギルドの依頼で、そんなことがあるとはな」シドが首を捻る。


「申し訳ありません。依頼書自体は本物。しかしそんな商会からの入金はありません。そもそも、そんな商会も存在しないようです」受付は謝罪し今回の件の弁解を始めた。今回の護衛対象と依頼主の関係や、護衛対象、依頼主の身辺まで調べさせたが依頼主は不明のままだった。よって報酬は払えない、と。


「護衛対象にも詰め寄ってみたけど、

『依頼主に支払い済みだ』の一点張りでね。

 このまま手ぶらじゃ帰るにも帰れないんだ」


 ため息を付くヴァルナがふとシドたちに言った。


「あんたたち、討伐依頼手伝ってよ!」


 元気よく言い切ったヴァルナに釣られ揺れる双丘。

 寅二郎はその瞬間立ち上がり言った。


「任せろ!もっこりビキニアーマーちゃん!」


 シドやリラは天を仰ぐが、

 全身鎧?の女戦士、ヴァルナとの共闘が決まるのだった。


「今回の討伐対象は“クレイジー・ボア”。

 突進の威力は侮れない。気は抜くなよ」


 ヴァルナと受けた討伐依頼、街から出た森の奥地に4人は立っていた。木漏れ日が差し込み、風が流れ木々を揺らす。しばらく草を掻き分け進む中、シドが呟く。


「静かに。…いたぞ」


 樹の陰から確認する寅二郎たち。濃厚な獣の匂いが鼻につく。

 薙ぎ倒された樹や草が見え、その奥に鼻息荒く佇む目標が見えた。


「俺が気を引く。トラジロウとヴァルナがメイン、リラは支援。いけるな?」


 そっと指示するシドに目線だけで応える寅二郎たち。

 リラが静かに支援魔法“バフ”をかけていく。

 ずっとヴァルナの胸を見ていた寅二郎だったが、そっと立ち上がった。


 クレイジー・ボアの側面を目指し、草むらを掻き分け進むシドを目で追う。立ち止まったシドがこちらを振り返った。お互い頷き寅二郎が走り出す。


「行くぞ!」


 クレイジー・ボアがこちらに気付いたようだ。

 地を踏みしめこちらへ走り出す。

 その横腹にシドの短剣が刺さる。


 クレイジー・ボアがそちらに気を取られた瞬間に寅二郎が鼻先を掴む。


「これでどうだ!」掴んだ鼻先ごと薙ぎ倒す。「今だ」寅二郎の声にヴァルナが剣を突き立てる。ヴオオオッと立ち上がろうとするクレイジー・ボアにヴァルナは吹き飛ばされた。


「ちっ……油断したわ」こめかみ辺りから血を垂らし、ヴァルナが起き上がる。


 寅二郎も弾かれ、後ずさる。「ヴァルナ!」見ると、飛ばされた先でリラに回復魔法をかけてもらっている。寅二郎は剣を抜き、クレイジー・ボアと対峙する。


 再び声を上げ襲い来るクレイジー・ボアの鼻先を目掛け、剣を振り上げる。

「風よ!」シドの風魔法が片足を切り飛ばし傾くクレイジー・ボア。寅二郎は剣を振り下ろし、その頭を切り飛ばした。


「すごい」リラの魔法で回復したヴァルナが傍へとやって来た。

 歓喜と疲労で激しく上下するヴァルナの胸を見ながら寅二郎が言った。

「まぁ?それほどでもないなぁ。はっはっは」


「トラジロウ、鼻の下伸びてるよ」

「恰好つかないな、お前という奴は」

  恒例の?“シドリラキック”を食らう寅二郎。


「痛えええぇ」そんな叫び声が静かな森に響き渡るのだった。


 その後、ギルド受付で報酬を分け合い、ヴァルナは言った。


「あんたたちみたいな腕利きがいるなら、

 しばらくこっちでやるのもいいかなって」


 そして、じゃまたね、と笑顔でギルドを出て行った。


「しかし、すごい装備だったな」シドがため息をつく。

「リラちゅわんもアレにしようぜ。俺買ってきちゃう」

「馬鹿!着るわけないでしょ」

 リラに尻を蹴られる寅二郎を見ながらシドは言った。


「しかし、ギルドの依頼と言ってもこんなことがあるんだな」

「ね、内容はしっかり確認しないといけないね」

「あんなビキニアーマーがヴァルニスにはいっぱいいるのかねぇ」

 寅二郎のセリフにシドが思案する。


(確かにヴァルナはヴァルニスから来たと言っていたな。

 ヴァルニスに何か起こっているのか?……考えすぎ、だろうか)


「もう、トラジロウはまだ懲りないのね」

「だってよう」リラと寅二郎の軽口を聞きながらシドは考えていた。

それでも三人はギルドを出て歩き出したのだった。

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