↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
163/309

第十一話 依頼探しはつらいよ②

 意気揚々とギルドを出る寅二郎。

 そして後ろに続くリラたちに声がかかった。


「済まない、突然に。君たちは文字が書けるのだろうか?」


「はい?」


 リラが振り返ると、銀色の体毛を持つ獣人族が立っていた。


「君たちギルドの掲示板で、依頼を色々と探していたようだ。

 実は今、“文”を渡したい相手がいるのだが、私は字が書けないんだ」


「それで?」


 シドはそっとリラの半歩前に立つ。


「お願いだ。文字を教えてくれないか。

 どうしても“文”で私の気持ちを伝えたいんだ」


「ええ、俺たち今からさけ、……ふが!」


 深く頭を下げる獣人の姿に、

 寅二郎の口を後ろ手に塞いだリラ。

 シドの隣に立つと言った。


「話、聞かせてくれる?」


 そう言って三人は獣人と共にギルド内へと戻ったのだった。


 騒めくギルド内でテーブルを見つけ、獣人が席につく。 

 そして、緊張した面持ちの獣人が言った。


「自己紹介がまだだったな。

 私はウルブス、この街で警備隊員として働いている」


「私はリラ。この二人はトラジロウとシドよ」


「早速だが“文”を渡したい相手と言うのは?」

 シドの言葉に照れくさそうな表情を浮かべ、ウルブスは言った。


「警備隊で俺たちの隊長をしている女性なんだ」

 ウルブスの態度に色めき立つリラとシドが言った。


「ほう、それで?」


「俺は元々貧しい家の生まれでな。それ自体を恨んだ時期もあった。

 しかし、彼女に拾われ隊に入れてもらって随分と生活が楽になったよ」


“融和”を訴え、街でも明るい雰囲気を感じていたリラたちが口を閉じる。


「頑張ればちゃんと身になるから、この国の在り方自体をどうこう言うつもりじゃないんだ。そんな環境で“隊長”まで上った彼女に憧れてな。それで、その……」


 体毛で覆われているはずのウルブスの顔が真っ赤に見えた。


「この俺の気持ちをちゃんと伝えたいんだ!」


 リラは微笑み、「いいよ。文字、教えるよ」とウルブスの隣に席を移し、“授業”を始めた。ウルブスは真剣な表情だ。しかし文字を間違えたのか、時折頭を抱えたり悪戦苦闘の様子。


 シドはウルブスのまっすぐな気持ちの吐露に眩しさを覚え、

(私の気持ちは。実際のところ、どうなんだろうな?いや、駄目だな)

 自分の心に向き合おうとして、結局、止めた。


 寅二郎はテーブルに突っ伏したまま、リラたちを眺めぼやく。

「けっ。人さんの恋路なんぞどうでもいいっての。酒行こうぜ、酒」

 シドに頭を殴られている間にリラたちの“授業”は終わったようだ。


「ありがとう!本当に感謝する」深々と頭を下げてウルブスは走って行った。


 ウルブスの後姿を見ながら、リラが言った。


「《クレイジーラック》で教わったことがこんな風に役立つなんてね」


 リラが“元”娼婦であったことを思い浮かべ、シドが言った。


「そうだな。あそこは“独り立ちする力は与えてくれていた”ということかもな」


「そこから力をどう使うかは私次第だったってことだね」


 リラはふっと息を吐き、「上手くいくといいね」と微笑んだ。


「そうだな。トラジロウはどう思う?」

 シドに振られた寅二郎は、


「知らねえよ。でもあの笑顔見たらもう、

 ……そういうことなんじゃねえかな」


 盛大に背伸びをしながらも、寅二郎の表情も笑顔に見えた。


「待たせちゃったね。そろそろ行こうか」

「ホントだぜ、腹も減ってきたしよぉ」

「ああ、行こう。ウルブスの未来に“乾杯”、だな」


 シドは立ち上がると、思い出したかのように言った。


「これも立派な“依頼”だったかもな」

「報酬は笑顔ってやつか。ハハっ」寅二郎が笑い飛ばし、


 三人は皆笑顔でギルドを、今度こそ出たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。