第十話 研究馬鹿はつらいよ②
寅二郎は渋々ながらも、三人は《機工の迷宮》へと辿り着いていた。
小高い丘の途中に入口が見えた。
しばらく人が入っていないのか、入口には多少伸びた草が見えた。構わず中へと入ると、洞窟というより人工的な通路の様になっていた。
ポッポッポと向かう先に明かりが灯り、まるで奥へと誘われているようだ。
「ボルカンからここの地図を預かっている。全部で10階層。所々に大部屋があり、ゴーレムタイプが襲ってくるらしい。罠も網羅しているとは言っていた。信用しすぎるのは危険だが、ひとまずこのまま進むとしよう」
シドに先導役を頼み、寅二郎とリラが続く。
「私、ダンジョンって初めてなんだけど何だかイメージと違うね」
「まぁダンジョンごとに色々あるんじゃねぇの?
俺も前に“地下墳墓”てのに潜ったことがある程度だけど」
寅二郎のセリフにシドは顔を顰めた。
帝国の女スパイ、フジコの顔がちらついたのだ。
(カルナードではまんまと逃げられた。今何をしていることやら)
「そういやぁカルナードの“地下墳墓”ならフジコがいたなぁ!」
寅二郎は嬉しそうに言い、リラが、「誰?その人」と言うのに、
「おお!見事なもっこり美女でな」満面の笑みで応える寅二郎。
それを見たシドは、壮絶な蹴りを寅二郎の臀部にお見舞いした!
「あ痛ぁーー!」寅二郎は飛び上がり、ひたすら尻をさするのだった。
ボルカンの地図は正確だったらしく、三人は中層へと難なく到着していた。
「おっと、この先の大部屋でゴーレムと対面のようだ」
シドが声を落として言い、壁に沿って歩き出した。大部屋の様子を見ると、確かに中央にゴーレムが鎮座しており、左右と奥に通路が見える。どこから来てもこの部屋にたどり着く構造になっているようだ。
「やるしかなさそうだな」寅二郎が剣へと手を伸ばし、
「じゃぁまずは防御の加護を」
と《サンクチュアリ・シールド》をリラが皆にかけた。
「悪いが俺の短剣では分が悪い。牽制に回るから寅二郎任せていいか?」
「おう、任せろ」シドのセリフに寅二郎が自分の胸を叩く。
「リラはバフの維持と回復に専念してくれ。つかず離れず、な」
大まかではあるが作戦は決まった。三人は部屋へと入った。
中央で置物の様であったゴーレムの眼に光が灯り、ギギギと動き出した。
ダンジョンから魔力を供給されているのか、羽虫の飛ぶような音が響く。
「行くぞ!」シドが一直線にゴーレムへ走ると見せて飛び上がる。
「風よ!」ゴーレムの頭上から風魔法を浴びせ、
「おらよ!」寅二郎がゴーレムを正面から切りつける。
ガキンっと音が鳴り寅二郎が後ずさる。「硬ぇ」そこへリラの魔法が降り注ぐ。
《ストレングス・アップ》筋力向上の加護が乗り、再び寅二郎が切りつけると、
ゴーレムの腕に傷が走った。
「行ける!助かったぜ、リラちゅわん」
そうして数合切り結ぶうちに、隙を見つけたシドが「貫け!」と雷魔法を落とし、硬直したゴーレムの首を寅二郎が切り飛ばした。
動かなくなったゴーレムを確認し、寅二郎が剣をしまった。
「ふぅ、硬ぇ硬ぇ。でもま、何とかなったな」
「ああ、今のフォーメーションで行けそうだな」
「大丈夫?怪我してるなら見せてね」
そうして三人は態勢を立て直し再び進み始めた。
そんな三人を陰から見ていた影が一つ。それは帝国の女スパイ、フジコだった。
(あれはトラジロウ!こんなところで再開するなんてね)
フジコは微笑みを浮かべながら、三人に気付かれぬようまた身を顰めるのだった。




