第九話 鑑定はつらいよ②
寅二郎が連れてこられたのは、
“フォレスト”の見張り台の一つ。
足元から広がるリュゼリオンの街並み、
そしてその街を囲う外壁が見えた。
「さて、トラジロウ、何が見える?」
眼下に広がる絶景を見回し、ボルカンが言った。
「何が見える?ったってなぁ。綺麗な街並みが見えるよ」
「そうじゃねぇ。お前、帝国の“ベルンの壁”だって見てきたんだろう?」
「ああ、“ベルンの壁”は見たけどよ。
つまり、アレか?この街の外壁がどうかって話か?」
ボルカンは声を出さず、ただ寅二郎を見て頷いた。
「確かに“ベルンの壁”を見たよ。
めちゃくちゃ頑丈そうだった。
実際“コルダ丘陵の時”だって残っていたしな」
寅二郎はリュゼリオンの街並を見ながら答える。
「だけど、俺ならこの街の外壁を作り続けるね」
その言葉にボルカンの瞳に力が入り、寅二郎に尋ねた。
「それは、なぜだ」
寅二郎はボルカンの迫力にたじろぎながらも言った。
「なぜって、そりゃ“再建するのに早そうだ”って感じか?
上手く言えねぇが、“絶対”壊れない壁なんてのは無理じゃね?って思うんだ」
ボルカンは息を呑む。
そして、それでと言った。
「今見えている壁はさ、壊れても比較的誰にでも建て直すことが出来そうだ。
でもな“ベルンの壁”みたいな“最新技術の結晶”ってのは壊れちまったら大変そうでな」
それに、と寅二郎は遠くの空を見上げながら言った。
「俺が別の世界にいたってのは知ってるよな?
その世界にな、“絶対安全”って言われていた施設があってな。
もし万が一の場合も対策しているから安心って。
でもそこがとんでもない天災に見舞われて、やられちまった」
ボルカンやシド、リラも息を呑んだ。
「確かに施設の被害ってのは想定内だったらしい。でもな、施設自体が水浸しになっちまったんだ。しかもその施設の扱ってる品物が厄介な品物らしくて、下手に手が出せなくなっちまったんだと。俺がこっち来る時でもまだ復旧の目途は立ってなかったな」
寅二郎はボルカンへと向き直り、言った。
「最新技術を求めるなって言いたいんじゃない。
つまりな、
“物は壊れる”。その前提で作ったり、
使ったりした方がいいんじゃねぇかな?って
そんなことを今、思い出したよ」
寅二郎の前世の話、その話を聞いたシドやリラは深く考え込んだ。
そして、ボルカンは寅二郎の眼をまっすぐ見たまま言った。
「合格だ。お前に頼みたいことがある」
一方、ミレイアに報告を終えたパトラはミレイアの眼を見て言った。
「そんな訳でな、私はトラジロウを婿にする」
唐突なパトラの宣言にミレイアは目を丸くした。
「ふふ、随分信用したのね。あの“勇者”を」
「“勇者を”というより“トラジロウを”という感じだな」
「ごちそうさま。
だけど忘れないで、“欲張りと世界樹”のお話を。
それだけはお願いするわね」
ミレイアの瞳に不安げなものを見たパトラは言った。
「ああ、忘れない。あの男なら、トラジロウならきっと大丈夫だ」
パトラの眼に決意の光を見たミレイアは話を変えた。
「さて、もうひとりの“勇者”は世界樹に何を見るのかしらね」
そう言ったミレイアとパトラ、
二人は自然と世界樹を見上げていたのだった。




