第九話 鑑定はつらいよ①
獣人族の代表、パトラと共に金虎族の事件を解決した寅二郎一行。ルゼリアの首都リュゼリオンで、ドワーフ代表ボルカンに顔を出せと呼ばれた件でパトラと共に馬車に揺られていた。
「しっかし、ボルカンだっけ?何の用だろうな?」
「さあな、
しかしお前は我らルゼリアの民からすれば、
仮にも“勇者”。
皆から興味を惹かれるのも当然と言えば当然であろう」
「むさい髭面のおっさんに興味を持たれてもなぁ……
俺はもっこり美女の依頼しか受付てねぇんだよ」
シドやリラは苦笑いし、パトラもため息をつく。
「本当にお前は変わらんな。
しかし、それでこそお前が“勇者”たる所以かもな。
ほら、見えてきたぞ。“フォレスト”だ」
そうして寅二郎一行は、“フォレスト”に帰ってきた。
「私はミレイアに今回の件を報告して、“テラス”へと帰るとしよう。
トラジロウ、本当に助かった。一族を代表して礼を言う。では、またな」
と互いに頭を下げると、
パトラは侍女たちを伴いミレイアの下へと歩いて行った。
そのパトラの後姿に寅二郎は苦笑いを浮かべた。
(俺は何もしてねぇよ。ホント強ぇ女だよ。お前は)
あの夜の会話を思い出しながらそっと呟いていた。
「さて、我々も行こうか」シドが言うが、
「ええ?やっぱりおっさんとこには行かなくてもよくねぇ?」
未だ渋る寅二郎の尻を叩きながら、リラが言った。
「馬鹿。いいから行くよ、ほら」
「イテっ、やっぱ怖ぇな。“オカン”はよ」
そうして寅二郎たちはボルカンに会うため番兵に案内を頼むのだった。
「よう、帰ったか。トラジロウ」
そう言って寅二郎たちを出迎えたボルカンは工房のような場所に居た。
中は石壁が塗り込められ、
耐火性への対策が取られた広い倉庫のような空間だった。
幾つか炉が見え、机が置かれている。
エルフやドワーフが図面を広げ何やら話合い、獣人の体格を測定しているドワーフたちの姿が見えた。
「ここは?」シドが辺りを見回し言った。
「ここはな、いうなればルゼリアの“研究開発室”といったところだな」
「そんな重要な場所に、私たちを?」
「何ぁに、今は重要案件も抱えちゃいねぇ。
それにお前ら、何か盗む気あるのか?」
ボルカンは急に睨みを利かせた。
「いえ、そんな」慌ててリラが手を振る。そして、
「それよりここは皆仲良さそうですね。種族を越えて」
そう返したリラにボルカンは微笑んだ。
「そうだろう?しかし、喧嘩だってするぜ?
でもま、ここにいるのは基本、研究馬鹿、何だろうぜ。
ルゼリアの為にって皆頑張ってる」
シドやリラが感心する中、
つまらなそうな寅二郎をボルカンが見つけた。
「そうだったな。トラジロウ、付いて来い。依頼の話だ」
そう言ってボルカンは寅二郎の襟首を掴み歩き出した。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺はもっこり美女の……」
慌てる寅二郎にボルカンは笑い飛ばして言った。
「ガッハッハ!いいから、いいから!
依頼の前に、ちょいと確認がある。
こっちだ。トラジロウ。ガッハッハ」
おい、首が苦しいとかぼやく寅二郎の後ろを、
シドとリラが苦笑いで付いていくのだった。




