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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第八話 勇者PTカルナードへ行く⑦

 翌日、

 アンナたちは魔族討伐の報告に、

 カルナード国王ザハリムの前で跪いていた。


「おお、勇者アンナよ。

 “光輪の乙女たち”の名に恥じぬ見事な手並みであったと聞いている。

 これで魔族の脅威は去った。カルナードを代表して礼を言うぞ」


 アンナは顔を上げ、ザハリムの眼を見て言った。


「国王様、お伺いしたいことがございます」

「何かな?」

「あの場では、魔族に奴隷たちが売られていました」

「何と!魔族に我が国の奴隷が」


 その言葉に、エルザの眉がわずかに動いた。

 そして顔を下げたまま思った。


(白々しい)


「そもそも、奴隷制度自体がいかがなものかと」


「何を言うか、奴隷制度は我が国の文化、伝統であるぞ」


 ザハリムが声を荒げる。


「それを言うのは内政干渉。勇者といえどお門違いではないか!」


 アンナはぐっと唇を嚙みしめる。そこへエルザが助け舟を出した。


「畏れながら、奴隷制度は今やどの国でも廃止、

 もしくは禁止されております」


(表向きはね……)


 帝国のレギウス三世の顔を浮かべながらエルザが言った。


「黙れ!よその国のことなど知らぬ。

 それに“勇者”とは“魔族討伐の旗印”!

 それを奴隷ごときで我が国に牙を向くような真似をするとは」


 ザハリムの言葉に、

 アンナは立ち上がりすっと眼を閉じた。


「違う」


「何だと?」


「“勇者”は“希望の象徴”」


 そこでアリア、リルル、ヤスコ、ユキナが立ち上がり、アンナの横に立つ。


「ただ国のために剣を振るうのではありません」


 ゆっくりと、噛みしめるように言う。


「国も、家名も、身分だって越えて“人々”のために戦う」


 そっと眼を開ける。


「それが国にとって不都合でも」


 そしてアンナは叫ぶ。


「私は“すべての人の勇者”です」


 その場の誰もが息を呑んだ。

 ザハリムさえも何も言えない中、ジャファルが立った。

 すっと首元のペンダントを引きちぎると足元に落とし、踏み砕いた。


「父上、いや国王。我々の負けです。我がカルナードも変わらなければ。

 アンナ、いや、勇者アンナよ。しばらく時間をくれないか。

 奴隷制度の件、それにカルナードの未来について考える時間が欲しい」


そして、静まり返った謁見の間に、

「よきに計らえ」

と、ザハリムのか細い声だけが響くのだった。

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