第八話 勇者PTカルナードへ行く⑥
夕刻、
リーネに連れられたあの建物に、
エルザは皆を集めた。
「奴らは夜遅くにゴミ処理施設の奥で何やら集まっている。
ここで始まるのを確認したら、突入しよう」
「でも、魔族はここで何を?」
アンナが尋ねるが、
「さあな、それは魔族を倒してから調べてみよう」
とエルザが答えた。
アンナはエルザの歯切れの悪さを感じたが、
そこへ物見がやって来た。
「どうやら、入って行ったようだな」
報告を受けたエルザが言い、
「私たちが制圧します。
ジャファル殿下たちは後詰、
誰も逃がさないよう後方待機でお願いします」
アンナの言葉にジャファルが言った。
「ああ、分かった。よろしく頼む」
「何やら始まったようだぞ」
外を見ていたヤスコのそのセリフで皆立ち上がった。
「行こう!」
アンナのセリフで動き出し、
ゴミ処理施設へと足を踏み入れた辺りで,
「フードをかぶっているのが三人。それが魔族だ。
他はカルナードの密売人か何かだろう」
エルザの補足に、アンナは返す。
「OK。とにかく魔族を最優先、だね」
息を顰めて建物の陰を渡り、焚火の周りに魔族とその他の人影を確認した。アンナは《暁の翼》の面々と目を合わせ、次の瞬間、飛び出した。
「何だ!お前たち」「いつの間に?」慌てる奴隷商人たちを即処理し、アンナ、アリア、ヤスコが魔族に迫る。ちぃと声を漏らし魔族たちはフードをアンナたちに投げつけた。
それを避けたアンナたちと魔族たち。一瞬の間が出来た。
魔族たちは直立したトカゲの様で、コブの付いた肌に鋭い爪が三本。ギョロギョロと目を動かし、口から黒い煙を立ち上らせていた。
「お前ら、まさか勇者PTか!」
魔族は戦闘態勢を取ろうとしたが、
その上からいくつもの雷が落ちた。
「《ライトニング・アロー》!」
リルルの雷魔法が降り注ぎ、魔族を貫く。
そして、
アンナ、アリア、ヤスコがそれぞれ首を跳ねた。
ユキナがそっと近づき、アンナたち三人の体の具合を確認する。
「それよりあの馬車、何だろうね」
とアンナが馬車へと近づくところへ、ジャファルたちも合流した。
「これは!」
とアンナが声を上げた。
そして馬車から手かせをつけられた奴隷たちを下ろした。
見れば、子供や老人もおり、皆瘦せ細っていた。
「これは、ひどい」
とユキナが奴隷たちに次々と治癒魔法をかけて回った。
口々に礼を言う奴隷たちを背にして、
アンナはジャファルに言った。
「これは一体どういうことですか?」
しかし、ジャファルも困惑顔だ。
言いあぐねるジャファルの背からエルザが言った。
「カルナードには奴隷制度がある。多分奴隷たちが魔族に売られたんだ」
前世での平和な世界から来たアンナたちは声が出ない。
アンナたちの表情を見たジャファルが叫ぶ。
「奴隷たちが魔族に売られていたなんて、私も知らない!」
静かなゴミ処理施設に声が響く。それでもアンナたちの表情は変わらない。
パチっ
と焚火で爆ぜた音がして、エルザが言った。
「ともかく魔族は排除しました。
明日カルナード国王に報告し、詳しくはその時に」
本来なら魔族討伐、そして凱旋。のはずがこの有様。結局アンナたち《暁の翼》の面々はそれぞれの部屋に入るまで一言も話すことは無かったのだった。
ただ、アンナは一人扉を閉めると、そっと自分の手を見ていた。




