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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第八話 勇者PTカルナードへ行く④

 勇者アンナへの突然の婚姻要求。

 沈黙が縛るこの間を解いたのはザハリムだった。


「ふふ、さすがに突然すぎましたかな?

 しかし、王子のジャファルは本気の様でしてな。

 是非一度会ってみてもらいたい」


 人当たりの良い笑顔を崩さぬままのザハリムに勧められ、アンナはカルナード第一王子ジャファルと面会することになった。


「ほかの皆様はどうか部屋でお待ちいただきたい。

“ここは若い二人にお任せして”という奴ですな。はっはっは」


《暁の翼》や使節団の面々が部屋へと戻る中、

「少し街を観光させていただきたい」とエルザは街へと出ていた。


(急がなければ)


 エルザはレオニス四世の密命“カルナードの実態調査”へと走り出していた。


一方、カルナードの第一王子、ジャファル・カルナードの部屋。

 中では、全身が映る姿見の前で一人の男が身づくろいをしていた。


(父上の言いつけ通り、上手くやらなければ……)


 ザハリムは黒髪であったが、母方の血か、ジャファルは輝く金髪であった。金糸で縁取られた詰襟の軍服に白いマントを纏わせ、何度も笑顔の練習のように、鏡に歯を見せていた。細身でスラっと長い自分の姿を確認しながら、父親ザハリムの“言いつけ”を思い出す。


(ジャファルよ、我が息子よ。我がカルナードは五大国としては地位が低い。

 そこで“勇者の血”を入れその地位を確固たるものとする。出来るな?)


 ザハリムの人当たりの良い笑顔。しかしその奥の瞳にジャファルはいつも不安なものを感じていた。我が父ながらその心が見えない。ジャファルはいつも父親の言いなりだった。胸元に下げたペンダントに自然と手がいっていた。


コンコンっと控えめに扉を叩く音がする。

「ジャファル王子?神代アンナと申します。いらっしゃるなら少しお話を……」


(来た!)


 ジャファルは一度、深く深呼吸をしてからアンナの待つ扉へと歩き出した。


「どうぞ、お待ちしておりました。勇者殿」


 そう言ってアンナを迎え入れてくれたのは、

 モデル雑誌にでも出ていそうな美男子だった。

 どうぞ、中へと招き入れる際にも仕草がとてもスマートで、絶やさぬ笑顔が眩しく、アンナは胸が高鳴るのを止められなかった。


「アンナ、とお呼びしても?」

 と尋ねられ、はいぃと返事をする際も声が上ずっていた。


 椅子を勧められ、座るのを確認してから自分の椅子へと座るジャファルをぼうっと眺めていた。胸の高鳴りに混乱している自分を認識していた。それでもジャファルと色々な話をした。冒険者としての活動や、様々な国の話。冒険を共にする《暁の翼》たちの話。


「おお、もうこんな時間か。アンナ、とてもいい時間でした。

 今すぐとは言いません。いい返事を期待しています」

 とジャファルに送られ、アンナは部屋を出ていた。


(何だろう、この気持ち。嫌では無かった。でも……)


 アンナは《暁の翼》の面々の待つ自分のあてがわれた部屋へと戻った。


 そこでメンバーにジャファルの印象、話した内容、全てを話した。


「いいムードじゃない。それ」

「よ、カルナード王妃アンナ!」

 アリアやヤスコに揶揄われ、

「いいなあイケメン王子」

「しかも、優しく待ってくれるなんて素敵」

 リルルやユキナも同調し、

 もう、止めてよとアンナは照れ笑いを浮かべた。


しかし、とアリアは真顔になって言った。


「アンナは“勇者”として召喚された。

 でも私たちも同じく召喚された“仲間”なんだ。

 だから、アンナの決めたことなら応援する。忘れないで」


 アンナはありがとうと返し、窓から見える月を眺めた。

(勇者アンナとしての自分、神代アンナ私自身、ちゃんと決めなくちゃ)


一方、ジャファルの部屋では、

 ジャファルがしきりにペンダントをいじり、

 街へと出たエルザはこの夜、帰っては来なかった。

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