第七話 継ぐ者はつらいよ⑤
夜となり、決闘後の静寂から一転、“虎穴”は宴会場と化していた。
下の集落からも多くの金虎族たちがやって来て大騒ぎをしていた。
寅二郎やリラも酒に料理と楽しんでいた。
しかし、シドは、
(あの時のパトラや、侍女たちの態度。何かあったのか?)
決闘後のパトラ達に何か違和感を感じていた。
しかしそこへ、
「おい!シド。何暗い顔してんだ?酒呑め!酒」
と、酒瓶を持った寅二郎が絡んできた。
「いやぁしかし、あの時のパトラ……眼福だったなぁ」
そんなことを言い出し、「この馬鹿!」とリラに殴られた。
そこでシドも、
「パトラに言いつけてやろう。もっこり即牢屋だな」
と言って立ち上がろうとし、
「やめて。それだけは勘弁してよ“オトーーン”」
と泣きついてくる寅二郎に笑いだすことになった。
噂をすれば影、騒ぐ寅二郎たちの後ろにはパトラが立っていた。
「トラジロウ、楽しんでくれているか?」パトラの声に、
「はいぃ楽しまさせてもらっておりまする」寅二郎が直立して応え、
「何なの、それ。変なの」「言葉が変になってるぞ」リラやシドが笑う。
「ふふ、ちとトラジロウを借りるぞ。トラジロウ、こちらへ来い」
そう言い、パトラは寅二郎を連れ陣幕を出た。
金虎族の村を見下ろせる位置まで来ると、パトラが言った。
「私は不器用でな。こんなやり方しか出来ん。
それでも王として、白虎族や、ここから見える金虎族だけでなく、
獣人族皆の為、未来の為に、これからも立ち続けようと思う」
金虎族の村を見下ろすパトラの背に、寅二郎は微笑みながら言った。
「何言ってんだ、パトラ。お前はいい女だよ」
パトラは振り返り、眼を丸くした。
「私が“いい女”か。……ふふ、ははは!」パトラは涙を流しながら笑った。
一頻り、笑い続けたパトラだったが、不意に寅二郎を見つめた。
「死ぬなよ、トラジロウ。この先もずっと。
お前の力はこの先も、いやこれからもっと必要になる」
パトラのまっすぐな視線を受けてなお、寅二郎は言った。
「当たり前だろ?まだまだ世界中のもっこり美女たちが俺を待ってるんだから」
あくまで変わらぬ態度を見せる寅二郎にパトラはまた笑い出し、
“虎穴”に響く金虎族たちの笑い声へと混ざり、夜は更けていくのだった。
翌朝、寅二郎たちはパトラと共に馬車で“フォレスト”へ帰ることになった。
「何、お前を逃がすとボルカンがうるさいからな」とはパトラの弁。
その後ろには金虎族の族長はじめ長老たちや村人たちがいた。
「パトラ様、それにトラジロウ一行よ。今回は迷惑をかけた。
しかし、次の機会には我ら金虎族の力、その本領をお見せしよう」
その族長の言葉を背に、一行の馬車は走り出した。族長たちは頭を下げ、村人たちの歓声は鳴り響き、寅二郎たちの馬車が見えなくなるまで続いたのだった。




