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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第七話 継ぐ者はつらいよ③

 寅二郎たちが酒場で大宴会となっていた頃、

 パトラは侍女を伴い“虎穴”へと入っていた。


 長老会総出で迎えられ、早速会談の運びとなっていた。

 “虎穴”は陣のようになっており、

 奥に洞窟の入り口が見え、

 小屋がいくつかと陣幕が見えた。


 パトラが陣幕の中へと入ると、

 上座の床几へと腰を下ろした金虎族の族長がいた。

 老いてなお、堅牢な鎧のようなその体躯に獣の気配を漂わせ、

 静かに目を閉じていた。

 その後ろには長老たちが平伏している。


 パトラはその族長を見下ろす位置まで寄り、立ったままで言った。


「最近、私に言いたいことがあるそうだな?」


 黒いローブ姿で身をすくませる長老たち。

 畏れながら、と長老の一人が言った。


「魔王軍との戦いも激しさを増す中、我らの“力”を示すべき時かと」


「その魔王軍との戦い、“融和”でもって事に当たろうと。

 そのためにこの“私”が獣人族代表として選ばれたはずだが?」


「そ、それは。しかし」言い淀む長老の背から、別の声が上がった。


「しかしそれでは誇りある金虎族の

 “血”が薄まるばかりでは?」


 パトラがそちらを向くと、

 フードで顔を隠したままの者が一人。

 低く通る声のその男の発言に、長老たちが騒めく。


「おい、貴様は黙っておれ」「パトラ様、これは」長老たちが騒ぐ中、


「“混じり児”の力では、金虎族の代々繋いだ“力”に及ばぬかと」


 と、続けた男のセリフに、


 一瞬、


 パトラの髪が逆立ち、その身から力が漏れ出た。


 その一瞬の圧に長老たちは一気に静まり、

 パトラはそんな彼らを見下ろすように言った。


「このままでは埒が開かんな。ここはやはり、

 我ら獣人族らしく決闘で決めるしかないか」


 そして、目を閉じ、目を開く。


「お主ら全員と私で決闘と行こうではないか」


「何と!」「我ら全員と?」「パトラ様お一人で?」長老たちはまた騒めき、


「お主もそれでいいな?」とパトラはフードの男を無視して族長に言った。


「……決闘としよう」


 それだけだった。

 だが、その族長の一言で全てが決まった。


 翌朝早くから、寅二郎たちは“顧問”と呼ばれる男の事を調べ始めた。ギルドで討伐依頼へと向かう前の者たちや、草原で訓練を行う兵士たちに訪ねて回っていた。


「薄気味悪い男だった」「フードの下の顔を見たことがない」「しかしいつの間にか“虎穴”にいた」等、話を聞くうちにどんどん寅二郎たちの不安は募っていった。そして、「隊長なら“顧問”に会ったことがあるらしい」と聞きつけ、三人は走り出した。


 草原での演習場に隊長はいた。

 肩で息をしながらも寅二郎が尋ねた。


「あんた、“顧問”ってのに会ったことがあるって?」


「ああ、だが今はもう長老たちの“顧問”。俺の口を出す問題では……」


「いいから特徴を、何か感じなかったか?」


「しかし、長老たちの意見に背くわけにも……」


 口ごもる隊長に詰め寄り、寅二郎はその肩を掴み揺さぶった。


「頼む、大事なことなんだ。パトラの事だけじゃない。

 あんたたちの未来にも関わるかも知れないんだ!」


 必死で肩を揺さぶるその傷だらけの両手を見て、

 隊長は考え、


 そして――。


「分かったよ。教えるさ。確かに薄気味悪かったよ。

 それにあの眼だ。何かこちらを見透かすような。

 怖くて何も言えなくなっていたよ」


 そこへ、若い兵士が走りこんできた。

「隊長!パトラ様と長老たちが決闘を――」


「パトラがやばい!」そう叫び寅二郎は走り出した。

 走りながら寅二郎は思い出していた。ベルゼのあの“眼”を。

(人の心に入り込むような気持ちの悪い眼、“顧問”ってのは、魔族だ!)


ルゼリアの中にまで入り込んでいた魔族の存在。

パトラの力を信じつつも焦り、“虎穴”を睨みながら寅二郎は走り続けたのだった。

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