↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
140/310

第六話 解放はつらいよ④

 ファルディーンの勧めにより、

 城に泊めてもらえることになった寅二郎一行。

 部屋へと案内される中、シドの歩みは少し遅れていた。


(……おそらく、あれは“治療”じゃない)


 シドは歩きながら、ファルディーンの言葉を思い返していた。


(《キープ》は空間を固定する魔法。

 だが、固定されたのは“傷”じゃない。“寅二郎自身の在り方”だ)


 世界樹に触れ、流れを自覚したことで、

 彼自身が“保存される側”であることをやめた。


(……だから解けた。解放されたが、刻まれた事実だけは残った)


――そして、その事実は、もう二度と“なかったこと”にはならない。

シドがそう考えた、その時だった。


 城の奥から、低く長い音が響いた。


――定例会議の合図だ。


“フォレスト”内の会議室。

 丸テーブルを囲う形でルゼリアの各代表が席についている。


 ルゼリアの旗の下、中央に耳長族代表、ミレイア・フォレスタが。


 そして、もう一つの席には獣人族代表パトラが。


 最後の一席には、小人族、ドワーフ代表のボルカン・ストヤノフが座っていた。


――ボルカン・ストヤノフ。豪華な椅子も手狭に感じさせる大柄な体躯。赤銅色の短い髭。火傷跡の残る腕を組み、眼を閉じ会議の始まるのを待っていた。


「それでは、定例会議を始めましょう」


 ミレイアの言葉に、ボルカンが眼を開いた。


 ドワーフたちが作る大地炉議会首座。武器・通貨・要塞建築の各代表を取り仕切るボルカン。血の気の多い彼らを時になだめ、時に力で黙らせる男がその重く低い声を発した。


「噂の、ステータス“0”勇者が来ているそうだな」

「ええ、“コルダ丘陵”の件で、ファルディーンに会いに」


 ミレイアが答え、パトラがボルカンを睨み言った。


「あれは私の婿にする。ボルカン、手を出すなよ」

「ふん、聞けば振られたそうではないか、パトラよ。いい気味だ」

「何だと!」二人の会話に苦笑いでミレイアが割って入る。


「その話はまた後で。

 それよりパトラ、報告があるのでしょう?」


 ミレイアの言葉に姿勢を正し、パトラが言った。


「ああ、身内の話だ。金虎族に反乱の兆し在り。

 私が出向くので、少々騒がせることになるかもしれん。それだけだ」


「金虎族と言えば、規模は白虎族を凌ぐと聞くな。

“大きな声”はなかなかに厄介よな」


 ボルカンはすっと眼を細め、


「パトラ、一人で大丈夫ですか?」


 ミレイアも心配の声を上げる。


「なあに、私が行って言い聞かせるさ。

 私自身の“声”で――

 それが、まだ通じるならな」


 パトラは深く息を吐くと続けた。


「それに、あの男を連れていくことにする」


 そしてパトラは窓の外に見える世界樹を眺めた。


こうして本人の預かり知らぬ間に、

寅二郎の次の目的地は決まっていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。