第六話 解放はつらいよ①
亜人共和国ルゼリア、その首都リュゼリオン。
雄大にたたずむ“世界樹”、その麓を囲う様に街が作られている。
そしてその周りを壁が囲んでいて、
東西南北4カ所ある検問所からしか入ることは出来ない。
乗合馬車から降りた寅二郎たちはまずは正面、南側の検問所を訪ねた。
エルフと獣人の兵士に寅二郎が話しかける。
「空間魔法に詳しい人に会いたいんだけど」
「旅人か?なぜその人に会いたいのだ?」
「ああ、俺の手がこんな状態で治らないもんで……」
そう言いながら、寅二郎は二人に手を見せた。
傷だらけで、ぎこちなく開閉を繰り返すその手を見ながらエルフが言った。
「ううむ……空間魔法の痕跡だな。固定系……《キープ》に近い」
「ファルディーン卿、“均衡者”さまならあるいは……」
「ファルディーン卿?」寅二郎が尋ねた。
二人の兵士によれば、
ファルディーン・アウレル――老エルフにして国家魔術部隊総監、「森と理の均衡者」と呼ばれルゼリアに欠かせない重要人物。世界樹のそばで魔術部隊の育成、訓練、その他軍事関連全てを統括しているという。
しかしなぁとエルフ兵が言う。
「ファルディーン様は国の軍事機密とも言えるお方。
おいそれと旅人に会わせるわけにもいかん。
まずは国主ミレイア=フォレスタさまの許可を得てから、だな」
「じゃあ、そのミレイア様に会わせてくれないか?」
寅二郎が食い下がる。
しかし、「許可が必要だな」と兵士は難色を示す。
どうしたものかとシドたちへ顔を向け、悩んでいる背に声がかかった。
「会わせてやるがいい」
皆が振り返ると、そこには白虎族の女王、パトラがいた。
白く輝く髪をなびかせ、二人の共を引き連れこちらへと歩いてきていた。
「お、お前は」「あなたは!」「なぜここに」
寅二郎たちが驚きの声を上げた。
「何、各代表たちとの定例会議があってな、
そのためにリュゼリオンへと赴いたまで」
そう言いパトラは寅二郎に微笑を向けると、
「未来の婿殿のため、妻として私が一肌脱ごうではないか」
『まだ、諦めていなかったのか!』
三人の頭の中で絶叫が響く、その顔を見回しパトラが言った。
「ふふ、丁度私も国主ミレイアに会いに行く途中。共に行こうではないか」
こうして、寅二郎たちはパトラと共にリュゼリオンへと足を踏み入れたのだった。




