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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第四話 探究者はつらいよ④

 月明かりだけが照らす道を三人は歩いていた。

 住宅街なのかどの窓にも、すでに明かりが点いていなかった。

 少し肌寒い風が吹き、時折遠くから酔客の声が聞こえた。


 先程から歩く速度の遅いリラを気遣い、寅二郎が言った。


「どうした?リラちゅわん。寒いのか?」

「いえ、そういうんじゃないけど……」


 二人が立ち止まっていることに気付いたシドが走り寄ってきた。


「やはり、場所に意味があるようではないな。

 人に狙いをつけて尾行し、隙を見つけて襲っているようだ」


 三人で次の動きを相談しているところへ、声がかかった。


「おや、こんな夜分にどうされました?

 いや、そうか早速辻斬り事件を追ってくれているのですね」


 そう声をかけてきたのは司祭ブラククだった。


「司祭!どうしてこんなところに」

「ブラククさん、一体どうしたんです?」

 シドとリラが、不意の遭遇に声を上げる。


「いえ、私も気になりましてね。逮捕する!とまでは言わないが、

 この街の住人として、夜回りをしていたところで」


 そう言いこちらへとブラククが歩いてきた。

 寅二郎だけが何も言わず、一歩リラへと体を寄せていた。


「よければご一緒しても?

 この先にも被害者が襲われた場所があるのですよ」


 そうしてブラククも加わり4人で夜の街を歩き出していた。


 シドが先頭を行き、寅二郎が続く。

 その後ろでリラとブラククが話し込んでいた。


「どうしました?リラさん。元気が無いようにお見受けしますが」

「いえ、そういうわけでは無いのですが」


「よければ私に話してみてくれませんか?

 実は私、こう見えて聖ローマン教の司祭、なのですよ」


 ブラククが冗談めかして言い、リラも笑みを浮かべた。


 そうしてしばらく歩く4人だったが、

 話し込む二人の距離が、先を行くシドや寅二郎と開いた瞬間。


 黒い靄が立ち上り、あろうことかシドも、ましてや寅二郎ですら――


 リラがいなくなっていることに気が付かなかった。


「おい、トラジロウ、そろそろ次の現場だ」


 そう言いながらシドが振り向いた時、

 シドが声を上げ寅二郎の方へ走り出した。

 首をかしげる寅二郎にシドの叫びが響く。


「リラがいない!どこだ?トラジロウ何してた!」


「何って、リラなら後ろに」


 いやな汗を感じながら振り向く寅二郎は、

 瞬間、背中につららを詰められた錯覚を覚えた。


 そこには、黒い靄を残してリラもブラククの姿も無かった。


「これは!闇魔法の《デコイ》か。やられた」

「おい、どういうことだ?」

「《デコイ》は偽物の気配だけ作り出す初歩の闇魔法。

 逃走中に使ったりする、いわば“囮”を作る魔法だ!」

「それは、つまり……」

「ああ、ブラクク、奴が真犯人だ!」


 最早全身汗まみれといった気分の寅二郎。

 強く強く握る拳から再び血が滴る。


「まだ、遠くまで行っていないはずだ!

 探すぞトラジロウ!」


来た道を返そうと走り出す二人に絶叫が届いた。


それは単なる殺人鬼の雄たけびでは無かった。

それはただ、答えを求める一人の男の心から出た、絶望だった。

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