第四話 探究者はつらいよ③
翌朝、ブラククの言葉が気にかかり、寅二郎たちはギルドへ顔を出した。
「ああ、辻斬り事件ですね。確かに調査依頼は出ています。ですが……」
「何か問題でもあるのか?」言い淀む受付の男にシドが尋ねた。
「問題と言いますか、被害者たちは刺されたり切られたり、といった暴行を受けたわけでは無いんです。ただ茫然と、『わからない』とか『思い出せない』と言うばかりで」
「記憶の欠損、と言ったところかな?」
「ええ、それに被害者の多くが“聖ローマン教の関係者”ってことで」
「うん?」
「この街では聖ローマン教ってこと自体がちょっと“アレ”でして……」
“異端”とでも言いたいのか受付の男が口ごもる。
(“聖ローマン教の関係者”、ブラククさん、大丈夫かな)
リラが不安な表情を浮かべるが、
「いいじゃねぇか。依頼は依頼。
とっとと犯人とっ捕まえて酒にでもしようぜ!」
元気づけようとでもいうのか、寅二郎が声を上げ、
「本当に変わらんな、お前は」とシドが呆れ顔を浮かべた。
三人は早速、その夜から行動を開始した。
「とりあえず被害現場を順番に歩いてみよう。
犯人の足取り、順番などから犯人の意図や考え方が分かるかもしれん」
シドの提案に三人で夜のブクルルを歩く。
しばらくしてリラの顔を見た寅二郎が声をかけた。
「どうした、リラちゅわん。元気ないな」
「いえ、犯人は何がしたかったのかなって」
「それは分からねえな。だけど被害者が出てる。
だからまずは犯人をふん縛る。それからだろ?」
「ええ、そうね」
しかし、それでもリラの足取りは重い。
そして、そんな三人を物陰から見ている影があった。
「ふふふ、辻斬り事件の話をしておいて正解だった。
ああリラ、お前の中にある答え、教えてもらうぞ」
そう言う影は月の光に眼鏡だけが光っているのだった。




