↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
129/310

第四話 探究者はつらいよ②

「遅い時間にすみません。誰かいますか?」


 教会の扉を開け、リラが尋ねると、

 正面上のステンドグラスに向け祈る人影が見えた。


「ああ、まだ構いませんよ」


 白衣の男が振り返ると、

 肩まで延びた銀髪、

 横に伸びた耳、

 茶色い肌のダークエルフ。


「ああ、私はブラククと申します。どういったご用件でしょう?」


 司祭だというブラククが、

 眼鏡の位置を直しながらこちらへ歩いてきた。


 リラはここへ来るまでの事情を説明した。


「なるほど、

 亜人たちが手を取り生きるこの街を“素敵”だと言って下さる。

 この街の者として、それは誇らしい気持ちになりますね」


 ブラククが眼鏡の奥で目尻を下げた。


「それにしても聖ローマン教の教会が珍しい。確かにそうでしょうね」


 おっと、と手を叩きブラククが言った。


「よければ、もう少しお話していかれませんか?

 お茶菓子くらいでしたらご用意させていただきますよ」


「ありがとうございます」とリラが言い、

「ええ?そろそろ酒が……」ぶつくさ言い出す寅二郎を引っ張り部屋を移った。


 茶菓子とお茶がふるまわれ、

 皆席に着いたところでブラククが言った。


「みなさんは“欲張りと世界樹”というお話をご存じですか?」


「いえ、“樹のおはなし”なら最近耳にはしましたが……」シドが返した。


「ああ、それは子供向けに編集したものですね。それで結構。

 実は私はその話の中の“女神さまのしたかったこと”が気になりましてね」


 と言い、ブラククが茶をすする。三人は首をかしげる。


「女神さまが人や亜人を生み、人の欲が原因で世界樹が生まれた。

 欲張ることを戒めるお伽噺だと思っていました」

 代表してリラが言った。


「エルフという種は、大抵、学者肌でしてね。

 “なぜ”とか“そもそも”、そういった事を気にする種族なんですよ」


 ブラククはリラに微笑み、


「大体、ダークエルフは闇属性を探究しすぎてこの肌になった種族だ、という説もあるくらいで。そんな中でも私は変わり者らしく、“女神さまが何をしたかったのか”が気になりすぎて聖ローマン教の司祭にまでなってしまいました」

 とまたブラククが笑った。


「探究のために司祭にまでなるなんて。エルフの探究心は相当のものですね」


 目を見張るリラを一心に見つめ、ブラククが言った。


「いえいえ、私は知りたくなってしまったのです。女神さまの心の行先が」


 そう言ってブラククが立ち上がった。


「おっと、もうこんな時間だ。随分お引止めしてしまった」

 ブラククがそう言って、この場はお開きとなった。


 しかし、そういえば、

 とブラククが最後に付け加えた。


「最近、辻斬り事件が発生しているらしいです。夜道にはお気をつけて」


「面白いお話をありがとうございました」

 そう言って頭を下げて帰っていく一行。

 その中でもリラを見つめ続けていたブラクク。

 扉が閉じると一人呟いた。


「長らく祈りを捧げてみるものだ。

 リラと言ったか、あの娘ならば女神の心の行先へ導いてくれるかもしれん」


蝋燭の灯る部屋の中、ブラククの眼鏡の奥は見えなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。