第三話 仲介はつらいよ②
次の日の朝、お互いの村の間にある広場に関係者が集まった。
こちらからはユリエと寅二郎たち、あちらはオクノ村代表とその仲間たち。
「ユリエ、冒険者まで連れてきて本気で争うつもりなのか?」
オクノ村代表、オミトと名乗った青年が言った。
オミトはオークらしく全身こげ茶の体毛に覆われ筋肉質ではあったが、細身で丸眼鏡をかけ、どちらかと言えば知的なタイプに見えた。
「ええ、そうよ。いつまでも水源を維持するだけじゃ駄目。
もっとこの先を見つめて開発するべきなのよ!」
ユリエの言葉に議論が始まった。
「何故だ?今の生活を保てるのは水源のおかげ。
何より君たちは代々、開発といっては水源の危機を迎えたではないか!」
オミトの意見に一瞬口を噤むが、ユリエはすぐに言い返す。
「それはやり方が古かったからよ。
今なら最新の技術で栄えることが出来るはず!」
二人のやり取りを聞きながら寅二郎が呟いた。
「何か、聞いたことある気がするな、これ」
「ああ、あれね、確か……」
「“樹のおはなし”だな」
寅二郎たちはハヤトの村で聞いたお伽噺を思い出していた。
そうしてしばらく二人の議論を聞いていた寅二郎たちだったが、
二人の議論が熱を帯び始めたところで、シドが言った。
「すまない。俺はこちらに付くことにした」
そう言うとシドは、オミトの側に立った。
「ちょっと、シド!」
リラが焦りの声を上げたが、
寅二郎はじっとシドの顔を見て黙ったままだった。
「ええ、構いませんよ。
どちらにせよ、
代表戦はオミトとトラジロウさんとで争うことになるのですから」
ヒトノ村とオクノ村との代表戦。人対オークでは差が大きい為、人側は代理を立てられる。過去には重傷者も出たといい、その他の細かなルールを確認し、その場は解散。明日“代表戦”が行われることとなった。
その夜、ユリエの家では、
「この村の発展のため、代表戦は必ず勝たなくては!」
「任せろ!もっこりちゃんの為、俺頑張る!」
とユリエと寅二郎は盛り上がるが、
「もう、……シドはどうしてるかな」
リラは不安な気分になっていた。
一方、オミトの家に泊めてもらうことになったシドは、
「悪いが相手は、トラジロウは強い、大丈夫か?」
「ええ、負けられません。代々守り続けた水源。
それを守り抜くことこそ皆の幸せなのですから」
「うむ、その意気だ」
オミトから村の歴史や代表としての気持ち、
そういったことを聞きながら夜を明かす。
代々守られてきた水源は、
今夜もまた泡が浮かび上がり静かに割れているのだった。




