第三話 仲介はつらいよ②
ついに“代表戦”が始まる。
昨日打ち合わせのために集まった広場には、各代表関係者、広場の周りには各村人たちが集まり歓声を上げている。
「トラジロウさん、頑張って!」
ユリエは声を上げたが、
リラは素直に応援出来ずにいた。そっと向こうのシドを見ていた。
シドは腕を組み、オミトに「落ち着いていけ」と声をかけていた。
そして審判役の老オークが中央に立った。
「ではこれより“代表戦”を執り行う。両者、前へ!」
号令により、寅二郎とオミトが前に出る。
「見ててね!ユリエちゅわん」
寅二郎はユリエに向いて声を上げる。腕は組んだままだ。
「やる。やるんだ」
オミトはしっかりと寅二郎を見据え、気合は十分だ。
「それでは、はじめ!」
開始の合図とともに突進したのはオミト!
まさに猪突猛進、雄たけびを上げ寅二郎へと走る。
ドスン!と鈍い音が響き、
「ひっ」リラやユリエ、女性陣が声を漏らす。
見ると、腕を組んだままの寅二郎の膝がオミトの腹に刺さっていた。
「ぐえ」と声を上げるオミト。
そのまま膝を蹴られ、次に顔を蹴られ吹き飛んだ。
「どうした?こんなもんか?」
寅二郎の言葉に再び突進するオミト。
しかし、体を交わされ足を掛けられ再び顔を蹴られ吹き飛ぶ。
「くそおぉ」
雄たけびを上げ、再度突進するが今度は正面から顎を蹴り上げられた。
すとん、と腰が抜けたオミトは、膝立ちの状態で動けなくなってしまった。
あまりに一方的な展開に場内が静まる。
しかし、寅二郎が沈黙を破った。
「俺の勝ちだな!ユリエちゃん。お礼はもっこりでいいんだぜ!」
そう言いながらユリエの手を掴んで行こうとする。
「ちょ」「トラジロウ?」ユリエやリラが狼狽する中、シドが叫んだ。
「それでいいのか?オミト!
思いは伝えなきゃ意味がないぞ!」
ぴくりと体が反応し、再びオミトの目に光が戻った。
「おおおおおお!」雄たけびを上げ立ち上がる。
「水源は俺が守る!」叫び走り出すオミト。
「今こそ村は一つになるべきなんだ!」
ユリエを引きはがし寅二郎につかみかかると、
「村も未来もユリエもみんな俺が守る!」
といって寅二郎を湖へと放り投げた。
ドボン!と音がして、
「トラジロウ!」リラとシドが走り出した。
会場が騒めきだす中、
「勝者、オミト!」
決着の声に皆が叫び出す。
「うおおお!やったぜオミト」
「ああ、オミトが代表なら安泰だ!」
傷だらけでへたり込むオミトに、
どちらの村からも人が集まっていた。
そして、ユリエも――。
「こんなに傷だらけで。でも、あなたの勝ちね」
「いや、こうやって議論を続けて二つの村が一つになる。
それが本当に大切なこと。違うかな?」
「ええ、あなたとならこれからも議論していけそうかな、ずっと、ね」
二人が抱き合い会場は歓声が響き渡っていた。
一方、湖から顔を出した寅二郎は、会場の盛り上がりを見て言った。
「おいおい、俺のユリエちゃんがあんな顔を……」
リラとシドは吹き出して、
「はいはい」
「そういうことにしておいてやるよ」
そう言ってシドは寅二郎の手を取り引き上げてやった。
その瞬間、寅二郎の顔が歪むのが見えた。
しかしすぐに、
「でもよう、俺の勝ちじゃね。あの展開」
とかなんとか寅二郎は愚痴りだした。
(やはり、トラジロウの手は治る見込み無し、か。世界樹に急がないと)
リラと共に村人たちの元へと向かう寅二郎の背中を、
シドは心配そうに見つめているのだった。




