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異世界はつらいよ~転生勇者放浪記~  作者: 花京
第五章 亜人共和国ルゼリア編
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第三話 仲介はつらいよ②

 ついに“代表戦”が始まる。


 昨日打ち合わせのために集まった広場には、各代表関係者、広場の周りには各村人たちが集まり歓声を上げている。


「トラジロウさん、頑張って!」


 ユリエは声を上げたが、

 リラは素直に応援出来ずにいた。そっと向こうのシドを見ていた。

 シドは腕を組み、オミトに「落ち着いていけ」と声をかけていた。


 そして審判役の老オークが中央に立った。


「ではこれより“代表戦”を執り行う。両者、前へ!」


 号令により、寅二郎とオミトが前に出る。


「見ててね!ユリエちゅわん」


 寅二郎はユリエに向いて声を上げる。腕は組んだままだ。


「やる。やるんだ」


 オミトはしっかりと寅二郎を見据え、気合は十分だ。


「それでは、はじめ!」


 開始の合図とともに突進したのはオミト!

 まさに猪突猛進、雄たけびを上げ寅二郎へと走る。


ドスン!と鈍い音が響き、


「ひっ」リラやユリエ、女性陣が声を漏らす。


 見ると、腕を組んだままの寅二郎の膝がオミトの腹に刺さっていた。


「ぐえ」と声を上げるオミト。


 そのまま膝を蹴られ、次に顔を蹴られ吹き飛んだ。


「どうした?こんなもんか?」


 寅二郎の言葉に再び突進するオミト。

 しかし、体を交わされ足を掛けられ再び顔を蹴られ吹き飛ぶ。


「くそおぉ」


 雄たけびを上げ、再度突進するが今度は正面から顎を蹴り上げられた。

 すとん、と腰が抜けたオミトは、膝立ちの状態で動けなくなってしまった。


 あまりに一方的な展開に場内が静まる。


 しかし、寅二郎が沈黙を破った。


「俺の勝ちだな!ユリエちゃん。お礼はもっこりでいいんだぜ!」

 そう言いながらユリエの手を掴んで行こうとする。


「ちょ」「トラジロウ?」ユリエやリラが狼狽する中、シドが叫んだ。


「それでいいのか?オミト!

 思いは伝えなきゃ意味がないぞ!」


 ぴくりと体が反応し、再びオミトの目に光が戻った。


「おおおおおお!」雄たけびを上げ立ち上がる。


「水源は俺が守る!」叫び走り出すオミト。


「今こそ村は一つになるべきなんだ!」

 ユリエを引きはがし寅二郎につかみかかると、

「村も未来もユリエもみんな俺が守る!」

 といって寅二郎を湖へと放り投げた。


ドボン!と音がして、


「トラジロウ!」リラとシドが走り出した。


 会場が騒めきだす中、


「勝者、オミト!」


 決着の声に皆が叫び出す。


「うおおお!やったぜオミト」

「ああ、オミトが代表なら安泰だ!」


 傷だらけでへたり込むオミトに、

 どちらの村からも人が集まっていた。


 そして、ユリエも――。

「こんなに傷だらけで。でも、あなたの勝ちね」

「いや、こうやって議論を続けて二つの村が一つになる。

 それが本当に大切なこと。違うかな?」

「ええ、あなたとならこれからも議論していけそうかな、ずっと、ね」

 二人が抱き合い会場は歓声が響き渡っていた。


一方、湖から顔を出した寅二郎は、会場の盛り上がりを見て言った。


「おいおい、俺のユリエちゃんがあんな顔を……」


 リラとシドは吹き出して、


「はいはい」

「そういうことにしておいてやるよ」


 そう言ってシドは寅二郎の手を取り引き上げてやった。

 その瞬間、寅二郎の顔が歪むのが見えた。


 しかしすぐに、


「でもよう、俺の勝ちじゃね。あの展開」

 とかなんとか寅二郎は愚痴りだした。


(やはり、トラジロウの手は治る見込み無し、か。世界樹に急がないと)


 リラと共に村人たちの元へと向かう寅二郎の背中を、

 シドは心配そうに見つめているのだった。

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